一言まとめ
マウスに対して水素吸入(67%水素/33%酸素)を繰り返し行ったところ、急性・慢性ストレスで起こるうつ様・不安様行動が有意に緩和された。血中ホルモンや炎症性サイトカインの上昇も抑制され、ストレスに対するレジリエンス向上が示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、マウスのストレス耐性を高め、うつ様・不安様行動を改善する効果があり、その効果は長期的に持続する可能性がある。
研究の背景と目的
ストレスは、うつ病や不安障害などの精神疾患の主要な原因の一つです。特に慢性的なストレスは、脳内のホルモンバランスや免疫システムに悪影響を及ぼし、精神疾患のリスクを高めます。近年、水素分子の抗酸化作用、抗炎症作用、神経保護作用が注目されています。本研究では、水素ガス吸入がマウスのストレス耐性にどのような影響を与えるのか、またそのメカニズムについて調査することを目的としています。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- レジリエンス
- ストレスや困難な状況に対する回復力・抵抗力のこと。心理学や精神医学の分野で使われる。
- うつ様行動・不安様行動
- マウスが示すうつ状態や不安状態とみなせる行動指標のこと。TSTやFSTでの不動時間増加、OFTでの中心部滞在時間減少などで評価。
- HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)
- ストレスを受けた際に活動するホルモン分泌システム。過度に活性化するとコルチコステロンなどの増加を介してストレス関連疾患を引き起こす。
- 炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)
- 免疫反応を調節するタンパク質の総称。過剰に分泌されると脳機能にも悪影響を与え、うつ症状の一因となる可能性が指摘されている。
- テイルサスペンションテスト(TST)・強制水泳テスト(FST)
- マウスを尾部から吊るす、または水中で泳がせるテスト。不動状態の長さが、うつ様行動の程度を反映すると考えられている。
- 新奇抑制給餌テスト(NSF)
- 新しい環境(不安要素)の中で餌を食べ始めるまでの時間を測定するテスト。潜在時間が長いほど不安レベルが高いとみなす。
- オープンフィールドテスト(OFT)
- 箱型の装置の中心部にとどまる時間や移動量から、不安や探索行動、活動量を評価するテスト。
論文情報
タイトル
Molecular hydrogen increases resilience to stress in mice(水素分子はマウスのストレス耐性を高める)
引用元
Gao, Q., Song, H., Wang, X. T., Liang, Y., Xi, Y. J., Gao, Y., Guo, Q. J., LeBaron, T., Luo, Y. X., Li, S. C., Yin, X., Shi, H. S., & Ma, Y. X. (2017). Molecular hydrogen increases resilience to stress in mice. Scientific reports, 7(1), 9625. https://doi.org/10.1038/s41598-017-10362-6
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