感染症
【医師監修】胃がんリスクを減らす!?ピロリ菌対策と水素吸入の効果を解説

【医師監修】胃がんリスクを減らす!?ピロリ菌対策と水素吸入の効果を解説

《この記事の監修者》

胃がん大国でもある日本。

近年では、「ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)」への感染によって、胃がんのリスクが高まることが指摘されています。

感染しても症状がなく気付きづらく、知らぬ間に感染していることもあるため注意が必要です。

本記事では、ピロリ菌の基本情報から、近年注目を集めている水素吸入とどのような関係があるのかについて解説していきます。癌のリスクを下げるためにも必要な知識が学べるので、ぜひ最後までご覧ください。

すいかつねっとのエビデンス評価
2.0

水素吸入療法の抗酸化作用や抗炎症作用が、ピロリ菌による胃粘膜の損傷を軽減する可能性が初期的に示唆されている。ただし、関連研究は理論モデルや動物実験に留まり、直接的な有効性を示すヒト研究は不足。

すいかつねっとのエビデンス評価基準はこちら)

ピロリ菌感染症ってどんな病気?

ピロリ菌感染症ってどんな病気?

ピロリ菌は、らせん状の形をした細菌で、胃酸という過酷な環境でも生きられる特徴を持っています。1)

また、一度感染すると除菌しない限りは胃の中に棲み続けます。

子どもの頃に感染するケースが多く、衛生環境の改善に伴い感染率は年々低下傾向にありますが、依然として一定数の感染者がいるのが現状です。2)

ピロリ菌の感染によって、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんの発生リスクが高まることがわかっているため、注意が必要です。

ここではピロリ菌の症状や治療法について解説していきます。

ピロリ菌感染症の原因は?

原因はヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)という細菌の感染です。

多くは幼少期に経口感染すると考えられており、不衛生な水や食物を介して菌が体内に取り込まれるとされています。

また、同じ家族内での感染(口移しでの食事やキスなど)も、原因のひとつとして指摘されています。

衛生状態の向上や生活様式の変化により、若い世代での感染率は低くなってきていますが、過去に感染したまま除菌治療を受けていない場合は、感染が続いている可能性があります。

ピロリ菌感染症の主な症状は?

ピロリ菌感染症は、感染していても症状がまったく出ないことが多いと言われています。

しかし、人によっては以下のような症状が現れることがあります。

ピロリ菌感染症の主な症状
  • 消化不良
  • 胃の不快感、もたれ
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 食欲不振

これらの症状が持続する場合、ピロリ菌感染を疑うことがありますが、同様の症状は他の胃腸障害でもみられるため、実際には検査を行わないと感染の有無は明らかになりません。3)

ピロリ菌感染症の治療法は?

ピロリ菌の感染が確認された場合、一般的には「除菌療法」が行われます。1)

これは、複数の抗生物質と、胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)を1週間組み合わせて服用する治療法です。

この治療によって、多くの方が除菌に成功するとされています。

ただし、近年は抗生物質に耐性を持つピロリ菌が増え、治療が効きにくくなる懸念も報告されています。4)

耐性菌対策として、抗生物質の組み合わせや投与期間を工夫した「シーケンシャル療法」や「コンコミタント療法」が海外では行われる場合もありますが、日本では保険適応外です。

水素吸入療法はピロリ菌感染症に効果がある?

水素吸入療法とは、水素ガスを直接吸入し、体内のさまざまな組織へ行き渡らせることで、酸化ストレスや炎症を抑制しようとする治療法の一つです。5)

近年では、ピロリ菌感染症を含む多様な疾患への応用可能性が研究されていますが、現時点でピロリ菌感染症に対して直接的な効果を示す臨床試験は限られています。

したがって、ここでは関連する研究報告から水素吸入とピロリ菌感染症の関係について探っていきたいと思います。

抗酸化作用:ピロリ菌による胃粘膜のダメージを軽減?

ピロリ菌は、胃の粘膜で「活性酸素」を発生させます。6)

この活性酸素によるダメージ、すなわち「酸化ストレス」が、胃炎や胃潰瘍などの発症に関与していると考えられています。

水素は、この活性酸素の中でも特に有害な「ヒドロキシルラジカル」などを選択的に消去することで、細胞や組織を酸化ストレスから守る働きが報告されています。7)

そのため、水素を体内に取り込んで酸化ストレスを抑えることで、ピロリ菌による胃粘膜へのダメージを軽減する可能性があります。

抗炎症作用:ピロリ菌による胃粘膜の炎症を抑える?

ピロリ菌感染症による胃粘膜の炎症は、胃潰瘍や慢性胃炎につながることがあります。

水素ガスは、いくつかの研究で抗炎症作用を持つことも報告されています。8、9)

胃粘膜の炎症を抑えることで、ピロリ菌感染症に伴う症状や損傷リスクを軽減できるかもしれません。

水素がピロリ菌の発がん性因子「CagA」を促進?

一方で、ピロリ菌感染に対して、水素が不利に働く可能性も考えられます。

ピロリ菌感染は、胃がんの発生リスクを高めることが知られています。10)

特に、「CagA」と呼ばれる発がん性因子を保有するピロリ菌は、胃がんのリスクをさらに高めることが分かっています。

ある研究ではピロリ菌が胃内などで発生する水素を利用してエネルギーを生成し、その際にCagAの胃の細胞内への移行を促進する可能性が指摘されています。10)

つまり、ピロリ菌に水素が利用され、胃がんリスクを高める可能性があるのです。

しかし、外部からの水素ガスの摂取が同様に寄与するのかについてはまだ不明であり、さらなる研究が必要になります。

まとめ:ピロリ菌対策の新たな選択肢?水素吸入療法の可能性

ピロリ菌感染症は、無症状であっても長期的な胃のダメージや胃がんリスクの上昇と深く関わっています。

そのため、きちんと検査を受けて感染が判明した場合は、まずは標準的な除菌療法を受けることが最も重要です。

水素吸入療法は、抗酸化・抗炎症作用などさまざまな可能性が示唆されていますが、ピロリ菌に対する直接的な有効性については、まだ研究段階にあります。

特に、ヒトを対象とした臨床試験は不足しており、より大規模な臨床試験を行い、水素吸入療法の有効性、安全性、適切な投与方法などを明らかにする必要があります。

今後さらに研究が進められ、有効性や安全性が確立されることを期待しましょう。

最後に、ピロリ菌の検査を受けたことがない方は、一度検査を受けることをお勧めします。

特に胃の不調を感じやすくなる40代以降の人は、胃がん対策としてピロリ菌の有無を検査し、感染している場合は除菌が推奨されます。

参考文献
  1. ヘリコバクター・ピロリ感染症|関西医科大学附属医療機関
  2. 日本ヘリコバクター学会 ガイドライン
  3. ヘリコバクター・ピロリ感染症|北里大学北里研究所病院
  4. Hsu, P. I., Wu, D. C., Chen, W. C., Tseng, H. H., Yu, H. C., Wang, H. M., Kao, S. S., Lai, K. H., Chen, A., & Tsay, F. W. (2014). Randomized controlled trial comparing 7-day triple, 10-day sequential, and 7-day concomitant therapies for Helicobacter pylori infection. Antimicrobial agents and chemotherapy, 58(10), 5936–5942. https://doi.org/10.1128/AAC.02922-14
  5. Ge, L., Yang, M., Yang, N. N., Yin, X. X., & Song, W. G. (2017). Molecular hydrogen: a preventive and therapeutic medical gas for various diseases. Oncotarget, 8(60), 102653–102673. https://doi.org/10.18632/oncotarget.21130
  6. Butcher, L. D., den Hartog, G., Ernst, P. B., & Crowe, S. E. (2017). Oxidative Stress Resulting From Helicobacter pylori Infection Contributes to Gastric Carcinogenesis. Cellular and molecular gastroenterology and hepatology, 3(3), 316–322. https://doi.org/10.1016/j.jcmgh.2017.02.002
  7. Ohsawa, I., Ishikawa, M., Takahashi, K., Watanabe, M., Nishimaki, K., Yamagata, K., Katsura, K., Katayama, Y., Asoh, S., & Ohta, S. (2007). Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature medicine, 13(6), 688–694. https://doi.org/10.1038/nm1577
  8. Huang, C. S., Kawamura, T., Lee, S., Tochigi, N., Shigemura, N., Buchholz, B. M., Kloke, J. D., Billiar, T. R., Toyoda, Y., & Nakao, A. (2010). Hydrogen inhalation ameliorates ventilator-induced lung injury. Critical care (London, England), 14(6), R234. https://doi.org/10.1186/cc9389
  9. Yin, H., Feng, Y., Duan, Y., Ma, S., Guo, Z., & Wei, Y. (2022). Hydrogen gas alleviates lipopolysaccharide-induced acute lung injury and inflammatory response in mice. Journal of inflammation (London, England), 19(1), 16. https://doi.org/10.1186/s12950-022-00314-x
  10. Wang, G., Romero-Gallo, J., Benoit, S. L., Piazuelo, M. B., Dominguez, R. L., Morgan, D. R., Peek, R. M., Jr, & Maier, R. J. (2016). Hydrogen Metabolism in Helicobacter pylori Plays a Role in Gastric Carcinogenesis through Facilitating CagA Translocation. mBio, 7(4), e01022-16. https://doi.org/10.1128/mBio.01022-16

このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

この記事は役に立ちましたか?

役に立ったら、下のボタンで教えてください。

新着記事
会員限定
おすすめ
PAGE TOP
ログイン

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

お友だち追加

\水素吸入に関する無料相談受付中!/

LINEお友だち追加