消化器系
【医師監修】十二指腸炎の新対策に?水素吸入の効果とエビデンスを解説

【医師監修】十二指腸炎の新対策に?水素吸入の効果とエビデンスを解説

《この記事の執筆者》

食生活やストレス、薬の影響など、さまざまな原因で引き起こされる十二指腸炎。

従来の治療法では十分な改善が見られず、苦しんでいる方も少なくありません。

そこで注目を集めているのが、「水素吸入療法」。酸化ストレスを軽減し、炎症を抑える可能性があることが研究で示されています。

本記事では、十二指腸炎の基礎知識から水素吸入が十二指腸炎に与える影響について、最新の研究データを基に詳しく解説していきます。

すいかつねっとのエビデンス評価
2.0

水素吸入による十二指腸炎への効果は、動物実験や酸化ストレスに関連する基礎研究の段階に留まる。現時点では直接的な臨床試験がなく、効果を裏付けるエビデンスは初期段階。酸化ストレス抑制による有用性が理論的に期待される段階。

すいかつねっとのエビデンス評価基準はこちら)

十二指腸炎とは?

十二指腸炎とは?

十二指腸炎とは、胃と小腸をつなぐ十二指腸の粘膜に炎症が起こる病気のことです。

炎症がひどくなると、粘膜がただれたり(びらん)、えぐれたり(潰瘍)することもあります。

令和2年の厚生労働省の調査によると、胃炎及び十二指腸炎の患者数は近年減少傾向にありますが、それでもなお、60,000人超と悩まされている方は少なくありません。1)

十二指腸炎の原因

十二指腸炎の主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

十二指腸炎の原因
  • ヘリコバクター・ピロリ菌の感染
    胃の中に住み着く細菌で、炎症を引き起こす。
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用
    痛み止めや解熱剤としてよく使われる薬ですが、胃腸の粘膜を傷つけてしまう。
  • ストレス
    ストレスによって胃酸の分泌が増えて、十二指腸の粘膜を傷つける。
  • アルコールの過剰摂取
    アルコールは十二指腸の粘膜を直接刺激する。
  • 刺激の強い食べ物
    香辛料などの刺激物は、十二指腸の粘膜に負担をかける。

十二指腸炎の症状

十二指腸炎の代表的な症状としては、以下のようなものがあります。

十二指腸炎の症状
  • お腹の痛み(特にみぞおちのあたり)
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 背中の痛み

症状が軽い場合は、自覚症状がないこともありますが、ひどくなると吐血や下血(黒い便が出る)を伴うこともあります。

また、進行して十二指腸の壁に穴が開いてしまう「穿孔」が起こると、緊急手術が必要になることもあるので、注意が必要です。

十二指腸炎の一般的な治療法

十二指腸炎の一般的な治療法は、原因によって異なります。

まず治療の一歩として、患者の生活習慣を見直すことが重要です。

たとえば、ストレス管理や十分な睡眠、胃酸分泌を抑えるために刺激物(アルコール、カフェイン、辛い食品)を控えた食事などが挙げられます。

一方、症状が重い場合や生活習慣の改善で回復が見られない場合は、薬物治療も行われます。

具体的には、ピロリ菌が原因の場合は抗生物質などを使って除菌し、そのほか胃酸を抑える薬や胃腸の粘膜を保護する薬などが用いられます。

また、NSAIDsなど原因薬剤となるものがあれば、使用中止または変更なども行います。

話題の水素吸入療法、十二指腸炎への効果は?

近年、「水素吸入療法」が注目されています。

水素が抗酸化作用や抗炎症作用を持つことが報告されてきており、水素ガスを吸入することで、様々な病気への効果が期待されているのです。

現在でもさらなる解明のために、数々の研究が進められています。

ここでは、関連する研究報告から、水素吸入が十二指腸炎に対してどのように役立つ可能性があるのかを考察します。

水素吸入が十二指腸炎の予防に役立つ可能性

残念ながら、水素吸入と十二指腸炎を直接的に調べた臨床試験は、現時点では公表されていません。

しかし、酸化ストレスが十二指腸を含む消化管の様々な疾患の病因に関与していることがわかっています。2)

水素には酸化ストレスを引き起こす活性酸素、中でも特に悪影響の強い悪玉活性酸素を選択的に除去する働き(抗酸化作用)があることが報告されています。3)

したがって、水素吸入により体内の酸化ストレスを軽減することで、十二指腸の予防に有効に働く可能性が考えられます。

しかし、まだ臨床研究において示されたわけではなく、あくまで「可能性がある」という域に留まります。

水素吸入が十二指腸炎の予防に役立つ可能性

十二指腸炎では、炎症によって「炎症性サイトカイン」という物質がたくさん作られます。炎症性サイトカインは、炎症反応を引き起こし、痛みや腫れなどの原因となります。

水素には、この炎症性サイトカインの産生を抑え、炎症を抑制する働きがあることが報告されています。4)

したがって、水素吸入により十二指腸の炎症が抑えられれば、痛みや不快感などの症状が和らぐことが期待できるでしょう。

実際、炎症性腸疾患(IBD)を患うマウスに電解水素水を与えたところ、大腸炎症状(腸内炎症や疼痛)を緩和し、早期に回復させたという研究報告もあります。5)

まだ動物実験ではありますが、水素が胃腸における炎症緩和に有効である可能性が示され、十二指腸でも同様の効果が期待できると考えられます。

【私はこう考える】水素吸入は十二指腸炎の予防や改善につながる?

現状では、十二指腸炎に対しての標準治療は対症療法が中心のため効果の高い治療は少ないのが現状です。

水素吸入は、十二指腸炎の原因となる酸化ストレスや炎症を抑えることで、予防や症状の改善に役立つ可能性があると考えられます。

胃潰瘍や小腸癌などの類似疾患・症状での治療実績もあるため、今後の治療選択肢として十分期待することができるでしょう。

一方で、現状は実臨床におけるデータが少ないことも事実ではあるため、今後のエビデンスの蓄積が重要と言えます。

現状、水素吸入による重篤な副作用の報告もなくデメリットは少ないため、現状の治療法では中々改善が難しい患者様は主治医とご相談の上、併用を検討しても良いかもしれません。

今後さらに研究が進められ、十二指腸炎だけではなく、様々な疾患の予防や改善に対する有効性が確立されることを期待して待ちたいと思います。

参考文献
  1. 令和2年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)
  2. Vona, R., Pallotta, L., Cappelletti, M., Severi, C., & Matarrese, P. (2021). The Impact of Oxidative Stress in Human Pathology: Focus on Gastrointestinal Disorders. Antioxidants, 10(2), 201. https://doi.org/10.3390/antiox10020201
  3. Ohsawa, I., Ishikawa, M., Takahashi, K., Watanabe, M., Nishimaki, K., Yamagata, K., Katsura, K., Katayama, Y., Asoh, S., & Ohta, S. (2007). Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature medicine, 13(6), 688–694. https://doi.org/10.1038/nm1577
  4. 水素医学の創始,展開,今後の可能性:広範な疾患に対する分子状水素の予防ならびに治療の臨床応用へ向かって – 太田 成男|公益社団法人日本生化学会
  5. Hu, D., Huang, T., Shigeta, M., Ochi, Y., Kabayama, S., Watanabe, Y., & Cui, Y. (2022). Electrolyzed Hydrogen Water Alleviates Abdominal Pain through Suppression of Colonic Tissue Inflammation in a Rat Model of Inflammatory Bowel Disease. Nutrients, 14(21), 4451. https://doi.org/10.3390/nu14214451

このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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