消化器系
【医師監修】便秘解消の新常識!水素吸入の効果と最新研究を解説

【医師監修】便秘解消の新常識!水素吸入の効果と最新研究を解説

《この記事の執筆者》

「最近、便秘に悩むことが増えた」「市販薬に頼りたくないけど、どうしたらいい?」──

そんなお悩みをお持ちではありませんか?

便秘は加齢やストレス、生活習慣の乱れなど、さまざまな要因で起こり得る症状です。

この便秘に対して近年注目を集めているのが「水素」です。

本記事では、便秘の原因や症状などから、話題の「水素吸入」が便秘改善にどのような可能性を秘めているのか、最新の研究データをもとに解説します。便秘対策として役立つ情報が満載なので、ぜひ最後までご覧ください。

すいかつねっとのエビデンス評価
3.0

動物実験や水素水に関する研究から、便秘の予防や改善の可能性が示唆されている。ただし、水素吸入そのものに対する臨床試験データは限定的で、今後の研究が求められる。

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便秘とは?

便秘とは?

便秘とは、排便がスムーズに行えず、排便回数や排便量が少ない、排便が困難、残便感がある、といった状態を指します。

便秘には様々な分類がありますが、便通異常症診療ガイドライン2023では、慢性便秘症は一次性と二次性に分類されています。

一次性としては、加齢やストレス、生活習慣の乱れによって腸の動きが乱れることで生じる「機能性便秘症」、過敏性腸症候群の一種である「便秘型過敏性腸症候群」、狭窄(きょうさく)以外の腸管の形態変化を伴う「非狭窄性器質性便秘症」に分類されます。

一方、二次性としては特定の薬剤の副作用として起こる「薬剤性便秘症」、糖尿病など他の病気に起因する「症候性便秘症」、大腸がんなどが原因で狭窄したことによる「狭窄性器質性便秘症」に分類されます。

2022年の国民生活基礎調査によると、日本人全体で3.6%が便秘を訴えており、65歳以上では7.1%と、加齢とともに便秘のリスクが高くなる傾向があります。1)

便秘の原因

便秘の原因はさまざまですが、大きく以下のような要因が考えられます。

便秘の主な原因
  • 食生活の乱れ
    食物繊維や水分の摂取不足が便のかさを減らし、便秘を起こしやすくします。
  • 運動不足
    腹筋や腸の動きが弱くなり、排便がスムーズに行われなくなります。
  • ストレス
    自律神経のバランスが乱れ、腸の動きに影響を与えます。
  • 加齢
    腸管のぜん動運動や消化液の分泌低下により便秘のリスクが高まります。
  • 疾患・薬剤の影響
    器質的な病気や、一部の薬の副作用が便秘の原因となることがあります。

便秘の症状

便秘の症状は、「排便回数が少ない」や「便が硬くて出にくい」だけではありません。

それ以外にも以下のような症状が現れることがあります。

便が出にくい以外の症状
  • お腹が張る、ガスが溜まる
  • お腹が痛い
  • 残便感がある(排便後もスッキリしない)
  • 食欲がなくなる
  • 肌荒れ、吹き出物
  • イライラする、気分が落ち込む

これらの症状は生活の質(QOL)を大きく損なう原因となります。

また、慢性的な便秘が続くと、痔や直腸脱などを引き起こすこともあるため、適切な対処が必要です。

便秘の一般的な治療方法

便秘の治療は、まず以下のような生活習慣の改善から始めます。

便秘時の生活習慣改善
  • 食事
    食物繊維を多く含む食事(野菜、果物、海藻、きのこなど)を心がけ、水分を十分に摂取する。
  • 運動
    適度な運動(ウォーキングなど)を行い、腸の働きを活発にする。
  • 排便習慣
    朝食後など、決まった時間にトイレに行く習慣をつける。
  • ストレス管理
    ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作る。

上記の生活習慣の改善で効果が見られない場合は、薬物療法を行います。

便を柔らかくする薬(酸化マグネシウムなど)や、腸の動きを活発にする薬(刺激性下剤)などが用いられます。ただし、刺激性下剤の長期連用は、腸の機能を低下させる恐れがあるため、注意が必要です。

水素吸入は便秘に効果がある?最新研究が示した可能性

近年、健康や美容への効果が期待され、注目を集めている「水素」。

水素を体内に取り込む方法の一つである「水素吸入」は、水素ガスを鼻から吸入することで、効率よく水素を体内に取り込むことができます。

今のところ、水素吸入と便秘の予防・改善を直接的に調べた研究結果は報告されていません。

しかし、水素水を用いたものや自律神経との関係など間接的に可能性を示唆する研究報告があるため、ここではそれらを元に考察していきます。

自律神経を整えて便秘を予防

水素吸入によって私たちの自律神経が整うことで、便秘が改善する可能性が示唆されています。

私たち人間の自律神経は、大きく分けて交感神経と副交感神経の2種類があります。

交感神経が優位になると、胃や腸などから分泌される消化液の量や、消化管の運動が低下するため、食物が消化されにくくなり便秘気味になります。

2020年の慶應義塾大学でのマウスを用いた研究によると、毎日1時間の水素吸入を行えば、活発になった交感神経の働きが抑えられ、自律神経のバランスが整うと報告されています。2)

この結果から考えると、水素によって自律神経が整えられることで、交感神経優位に起因する便秘の予防につながる可能性が考えられます。

水素水で慢性的な便秘が改善

水素水を飲用することによる、便秘改善効果も示唆されています。

2023年に慢性便秘と診断された28人を対象として行われたこの研究では、水素濃度約0.5 mg/Lの水素水を1日あたり体重1 kgあたり20 mLを目安に、1日3回に分けて飲用してもらいました。3)

その結果、4週間後には、自然の排便かつ残便感のない「完全自発排便」の回数が開始前よりも有意に増加したことが示されています。(週あたり平均1.81回から2.58回へ増加)

また、開始前に比べて便の形状の改善やお腹のハリなどの便秘症状の改善もみられ、便秘による生活の質低下が大きく改善したことが明らかとなっています。

これらの結果から水素が便秘改善に役立つ可能性が示唆され、水素水よりも効率的に水素を取り込める水素吸入にも同様の効果が期待できるかもしれません。

まとめ:水素吸入は便秘治療の新たな選択肢となるか?

便秘は軽く思われがちな症状ですが、放っておくと肌荒れや頭痛、肩こり、イライラなど、全身に様々な悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

水素吸入は、この便秘への新しいアプローチとして期待が寄せられています。

現時点では、水素吸入が便秘を直接的に改善することを示す臨床研究は限られていますが、自律神経を整えることによる便秘予防や水素水の摂取による便秘改善が報告されており、水素吸入にも同様の効果が期待できます。

ただし、効果には個人差があること、また、最適な吸入濃度や時間など、まだ明らかになっていない点も多いことを理解しておく必要があります。

今後の研究によって、水素吸入の便秘に対する有効性や安全性がより明確になることを期待しています。将来的には、水素吸入が便秘治療の選択肢の一つとして、広く用いられるようになるかもしれません。

年齢を重ねるにつれて便秘に悩まされることが多くなり、その対策としてはまずは生活習慣を改善することが大切です。

いま便秘にお悩みの方は、普段の食生活や運動習慣を見直し、ストレスを上手に解消することを心がけましょう。それでも改善しない場合は、医療機関に相談することをお勧めします。

また、水素吸入に興味がある方は、医師とよく相談した上で、試してみるのも良いかもしれません。

参考文献
  1. 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
  2. Sugai, K., Tamura, T., Sano, M., Uemura, S., Fujisawa, M., Katsumata, Y., Endo, J., Yoshizawa, J., Homma, K., Suzuki, M., Kobayashi, E., Sasaki, J., & Hakamata, Y. (2020). Daily inhalation of hydrogen gas has a blood pressure-lowering effect in a rat model of hypertension. Scientific reports, 10(1), 20173. https://doi.org/10.1038/s41598-020-77349-8
  3. Sharma, S., Kim, Y., Bajgai, J., Rahman, M. H., Jeong, Y. J., Goh, S. H., Park, H. J., Kim, C.-S., Kim, H. I., & Lee, K.-J. (2023). The Effect of Electrolyzed Hydrogen-Rich Alkaline Reduced Water on Patients with Chronic Constipation—A Clinical Trial. Processes, 11(7), 2142. https://doi.org/10.3390/pr11072142

このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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