《この記事の執筆者》
2011年国立大学医学部卒。初期臨床研修を経て総合診療医として勤務しながら、さまざまな疾患の患者さんに向き合う治療に従事。医療行政に従事していた期間もあり、精神福祉、母子保健、感染症、がん対策、生活習慣病対策などに携わる。結核研究所や国立医療科学院での研修も積む。2020年からは医療法人ウェルパートナーで主任医師を勤める。
顔の赤みが気になることはありませんか?
赤ら顔は、多くの人が抱える悩みであり、その原因は毛細血管の拡張や肌のバリア機能の低下、さらには皮膚の病気に至るまでさまざまです。
特にセルフケアだけでは改善が難しいケースも多いですが、最近注目されているのが「水素吸入」です。水素吸入は、肌の水分量を増やし、炎症を抑えることで赤ら顔を予防・改善する効果が期待されています。
本記事では、水素吸入が赤ら顔に与える具体的な効果とそのメカニズムについて詳しく解説します。
赤ら顔って?その原因3つ
赤ら顔とは、肌が赤みを帯びた状態になることです。
赤ら顔になると肌の透明感が損なわれるため、顔の印象を大きく変えてしまうことも少なくありません。
まずは、赤ら顔の原因について詳しく見てみましょう。
赤ら顔の原因①:毛細血管の拡張
肌の表層にある拡張した毛細血管が透けて見えるようになると赤ら顔になります。顔は皮膚が薄いため、寒暖差や紫外線などによって刺激を受けると毛細血管が拡張しやすく、赤ら顔を引き起こします。
特に肌が薄い人は毛細血管拡張による赤ら顔が目立ちやすいため注意が必要です。
赤ら顔の原因②:バリア機能の低下
肌の表層を覆う角質は紫外線、摩擦、乾燥などの刺激から肌を守る働きがあります。このバリア機能が低下すると肌はさまざまな刺激を受けやすくなり、肌に炎症が生じて赤ら顔を引き起こすことがあります。
肌のバリア機能低下は、肌の乾燥、睡眠不足やストレスなどの生活習慣、ホルモンバランスの変化などが主な原因です。
赤ら顔の原因③:皮膚の病気
赤ら顔はニキビや酒さなど皮膚の病気によって引き起こされる場合もあります。
特に酒さは原因がはっきり分かっていない慢性的な炎症を引き起こす病気であり、遺伝も関与していると考えられています。悪化するとヒリヒリ感や発疹などの症状を伴うようになるケースも少なくありません。
赤ら顔を改善するには?
赤ら顔にはさまざまな原因があるため、生活習慣を見直すとともにそれぞれの原因に合った対策が必要です。
赤ら顔を改善するには、以下のような対策をしてみましょう。
赤ら顔対策①:保湿ケア
赤ら顔の大きな原因の一つが肌の乾燥です。肌の水分を補って角質の状態を改善するには、ヒアルロン酸などの保湿成分がしっかり含まれた化粧水や乳液、クリームなどで保湿ケアをしましょう。
特に赤みが気になる部位はパックなどのスペシャルケアをするのもおすすめです。
ただし、赤くなった部位はバリア機能が低下して敏感な状態になっています。ゴシゴシ擦るようなケアはかえって状態を悪化させてしまうことがあるため注意しましょう。
赤ら顔対策②:治療
赤ら顔のなかには、ニキビ跡や酒さなどセルフケアだけでは改善できないものもあります。
生活改善や保湿ケアをしても顔の赤みが引かない場合は、美容皮膚科などで治療を受けることもできます。
セルフケアをしても顔の赤みが気になる人は、医療機関で相談してみましょう。
水素吸入は赤ら顔の予防や改善に役立つ?
赤ら顔は肌の透明感を損なわせるため、美容の大敵と言えます。しかし、赤ら顔は原因によってはセルフケアだけでは改善できず、さらに拡張した毛細血管をセルフケアのみで元の状態に戻すのは困難なケースも少なくありません。
そのため、新たな赤ら顔の予防や改善方法を見出すための研究が今も続けられています。近年では、水素吸入にも赤ら顔を改善する効果があることを示唆する研究結果が報告されています。
具体的にどのような内容なのか詳しく見てみましょう。
水素吸入は肌の水分量を増やして赤ら顔を予防
2018年、日本の研究チームは水素吸入が肌の水分量を増やす働きがあることを示唆する研究結果を発表しました1)。
この研究は健康な男女10名を対象に、水素吸入をした後と通常の空気を吸入した後の肌の状態を比較検討しています。その結果、通常の空気を吸入した後には肌の水分量が減少したのに対して、水素吸入をした後は肌の水分量が時間とともに増加したことが明らかになりました。
水素吸入は赤ら顔の予防に役立つ可能性
今回の研究は限られた人数での比較検討であるため確実な効果があると言える段階ではありませんが、水素吸入は肌の水分量を増やす効果を持つ可能性が示されました。
赤ら顔の根本的な原因の一つは肌の乾燥によるバリア機能の低下です。水素吸入は肌の水分量を増加させ乾燥を防ぐことで赤ら顔を予防する効果が期待できると言えるでしょう。今後、さらに大規模な検討を行い、効果が解明されることを期待します。
水素水には肌の炎症を改善する
2018年、中国の研究チームは水素水が皮膚の慢性的な炎症をを改善する効果があることを示す研究結果を報告しました2)。
この研究は慢性的な皮膚の炎症が生じる乾癬の患者41人を対象に行われ、8週間にわたる水素水(水素ガスが溶けた水)で入浴後の症状の変化を比較検討しました。その結果、被験者の24.4%で皮膚症状の改善が認められ、通常のお湯で入浴した場合と比較すると有意な改善があったとされています。また、33.3%の被験者でかゆみなどの自覚症状が消失したとされています。
研究者たちは、水素水による活性酸素の除去効果によって皮膚の炎症が抑えられたと考え、他の慢性的な炎症を引き起こす皮膚の病気にも有用である可能性が高いと結論付けました。
水素吸入は赤ら顔の改善に役立つ?
今回の研究結果から、水素分子は活性酸素を除去することで皮膚の慢性的な炎症を改善する効果を持つことが示唆されました。セルフケアでは改善しない赤ら顔の原因として、慢性的な炎症が挙げられています。水素分子はこのような赤ら顔を改善する可能性があると言えるでしょう。
水素吸入は水素分子を効率的に体に取り込むことができるため、水素吸入にも同様の効果が期待できる可能性があります。今後の研究の進展に期待しましょう。
【私はこう考える】水素吸入と赤ら顔
赤ら顔はさまざまな原因によって引き起こされ、なかにはセルフケアのみでは予防や改善が難しいケースもあります。赤ら顔は肌の透明感を損なう美容の大敵であり、多くの予防や改善方法が見いだされていきました。
今回ご紹介した2つの研究結果から、水素吸入はさまざまなタイプの赤ら顔を改善する可能性が示唆されました。どちらも限られた人数での検討であり、今後はさらに大規模な検討が必要となりますが、研究が進展して水素吸入が赤ら顔ケアの一つとして普及することを期待します。
参考文献
- 水素吸入による人体の生理学的効果に関する研究(2023)|摂南大学理工学部 川野常夫
- Zhu, Q., Wu, Y., Li, Y., Chen, Z., Wang, L., Xiong, H., Dai, E., Wu, J., Fan, B., Ping, L., & Luo, X. (2018). Positive effects of hydrogen-water bathing in patients of psoriasis and parapsoriasis en plaques. Scientific reports, 8(1), 8051. https://doi.org/10.1038/s41598-018-26388-3