《この記事の執筆者》
2011年国立大学医学部卒。初期臨床研修を経て総合診療医として勤務しながら、さまざまな疾患の患者さんに向き合う治療に従事。医療行政に従事していた期間もあり、精神福祉、母子保健、感染症、がん対策、生活習慣病対策などに携わる。結核研究所や国立医療科学院での研修も積む。2020年からは医療法人ウェルパートナーで主任医師を勤める。
乾燥肌に悩んでいる皆さん、水素吸入が新たな救世主になるかもしれません。
肌がカサカサして化粧乗りが悪くなるだけでなく、痛みやかゆみまで引き起こす乾燥肌。この肌トラブルに対して、効果が期待され注目を集めているのが水素吸入です。
本記事では、乾燥肌の原因や症状、さらに水素吸入の具体的な効果について詳しく解説します。乾燥肌でお悩みの方の一助となる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
乾燥肌とはどんな状態?原因は?
乾燥肌とは、肌を守るための皮脂が不足し、肌自体の水分も減少して潤いを失った状態の肌のことです。
乾燥肌になると肌がカサカサして化粧乗りが悪くなるだけでなく、肌のバリア機能が損なわれて「敏感肌」になることも少なくありません。
まずは、乾燥肌の症状や原因について詳しく見てみましょう。
乾燥肌の症状
肌が潤いを失って乾燥すると、以下のような症状が現れるようになります。
- 肌の一部がカサカサ、ザラザラした質感になる
- 肌白い粉を吹いたような状態になる
- 入浴後や洗顔後に肌がつっぱる
- 肌に赤みがあって、ヒリヒリした痛みやかゆみがある
これらの症状が続くときは乾燥肌の可能性があるため注意が必要です。
乾燥肌の原因
乾燥肌の根本的な原因は、肌の表面にある角質の機能が低下することです。
角質は肌をさまざまな刺激から守り、肌内部の水分の蒸発を防ぐ働きがあります。つまり、角質は肌のバリア機能を担うため、角質の構造が乱れると乾燥肌を引き起こすのです。
角質の機能が低下する原因には、以下のようなものが挙げられます。
- 睡眠不足やストレスなどの乱れた生活習慣
- 加齢
- 空気の乾燥
- 紫外線などによる肌へのダメージ
- 保湿不足などの誤ったスキンケア
乾燥肌を予防、改善するには?
乾燥肌を予防、改善するには日頃の生活習慣やスキンケアを見直す必要があります。
具体的には以下のようなことを心がけましょう。
乾燥肌対策①:生活習慣を整える
角質のバリア機能を維持するには、規則正しい生活を送ることが大切です。角質は古くなった細胞が重なってできていますが、約28日の周期で肌の奥で作られる新しい細胞と入れ替わります。
しかし、睡眠不足、ストレス、バランスが悪い食事などの生活習慣はこの新陳代謝を乱して古くなった細胞を蓄積されます。その結果、角質の構造が乱れてバリア機能が低下するのです。
乾燥肌対策②:適切なスキンケア
乾燥肌を防ぐには、入浴後や洗顔後などに保湿成分が配合された化粧水や乳液で失われた水分を補う必要があります。
特に肌が乾燥しているときは、美容液やパックなどでスペシャルケアをするのもおすすめです。
乾燥肌対策③:肌への刺激を避ける
紫外線、肌への摩擦、過度な空気の乾燥は肌にダメージを与えてバリア機能を低下させます。
日頃から日焼け止めや帽子などで日焼け止め対策をする、乾燥した季節は加湿器を使用するなどの対策をしましょう。
水素吸入は乾燥肌の予防や改善に役立つ?
乾燥肌は肌の質感を悪化させるだけでなく、悪化すると痛みやかゆみなどを引き起こします。乾燥肌を予防、改善する方法はこれまでにも多く見出されており、ケア用品も多く販売されているのが現状です。
近年では、水素吸入が乾燥肌の予防、改善に役立つ可能性を示唆する研究結果も報告されています。どのような研究結果か詳しく見てみましょう。
水素吸入は角質のダメージの回復を促して乾燥肌を予防する?
2023年、中国の研究チームは水素吸入が角質に生じたダメージの回復を早めてバリア機能の維持に役立つ可能性を示唆する研究結果を報告しました1)。
この研究は皮膚に傷を作ったマウスを用いた動物実験であり、水素吸入をさせた群とさせていない群に分けて傷の治り方を比較検討しました。
その結果、水素吸入をしたマウスの傷はしていないマウスの傷と比較すると、有意に速く治ったことが明らかになっています。また、コラーゲンは1.5倍生成され、炎症を引き起こす物質は減少したことも明らかになりました。
これらの結果から、水素吸入には肌のダメージや炎症を抑えてバリア機能をキープするのに役立つ可能性が示唆されたのです。
水素吸入が乾燥肌の予防に役立つ可能性
今回の研究から、水素吸入は肌のダメージや炎症を抑える可能性が示唆されました。乾燥肌は紫外線や摩擦などによる角質のダメージや炎症も大きな要因です。そのため、水素吸入は角質のバリア機能の維持に役立ち、乾燥肌を予防できる可能性があると考えられます。
まだ動物実験の段階であるため確実な効果があると断言することはできません。今後人に対する研究が進むことを期待します。
水素吸入が肌の水分量を高めて乾燥肌を改善する?
2022年、日本の研究チームは水素吸入が額や頬の水分量を高める可能性を示唆する研究結果を報告しました2)。
この研究は22~24歳の10人を対象に行われ、水素吸入を行うときと空気を吸入するときに分けて肌の水分量を比較検討しました。そ
の結果、吸入1時間後には水素吸入をしたときは室内で安静にしていても肌の水分量が増えたことが示されています。
水素吸入は乾燥肌の改善に役立つ可能性
今回の研究結果から、水素吸入は肌の水分量を高める可能性が示唆されました。限られた人数のみを対象とした研究であるため、確実な効果があると立証できる段階ではありません。
今後さらに大規模な検証が必要となりますが、さらに研究が進んで乾燥肌対策の一つとして水素吸入が普及する日が来るかもしれません。今後の研究に期待します。
【私はこう考える】水素吸入と乾燥肌
乾燥肌は肌の見た目を悪くするだけでなく、痛みやかゆみなどの原因になることも少なくありません。乾燥肌を予防、改善するには生活習慣の見直しと適切なスキンケアを行う必要があります。
今回ご紹介した2つの研究結果から、水素吸入には乾燥肌の予防や改善に役立つ可能性が示されました。現時点では確実な効果があるとは言えませんが、水素吸入は健康や美容に良い効果がたくさんあります。
自宅でも簡単にできるため、スキンケア用品の一つとして取り入れてみるのもよいでしょう。
参考文献
- Zhao, P., Dang, Z., Liu, M., Guo, D., Luo, R., Zhang, M., Xie, F., Zhang, X., Wang, Y., Pan, S., & Ma, X. (2023). Molecular hydrogen promotes wound healing by inducing early epidermal stem cell proliferation and extracellular matrix deposition. Inflammation and regeneration, 43(1), 22. https://doi.org/10.1186/s41232-023-00271-9
- 水素吸入による人体の生理学的効果に関する研究(2023)|摂南大学理工学部 川野常夫