基礎知識
水素はドーピングになるのか?

水素吸入はドーピングになる?世界アンチ・ドーピング機関の見解を徹底解説!

《この記事の執筆者》

近年、疲労回復やパフォーマンス向上への効果が期待され、アスリートの間で注目を集めている水素吸入。しかし、「水素吸入はドーピングに該当するのでは?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、水素吸入がドーピングに該当するのか、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の見解を基に解説します。さらに、水素吸入がアスリートにもたらす効果や、今後の展望についても最新の研究結果を交えながら詳しく見ていきます。

水素吸入がアスリートに注目される理由

水素吸入がアスリートに注目される理由

激しいトレーニングを行うアスリートにとって、疲労回復は重要な課題です。

水素は、体内で発生する活性酸素を除去する「抗酸化作用」と、炎症を抑える「抗炎症作用」を持つことが知られています。

これらの作用により、水素吸入は、筋肉痛の軽減、持久力向上、疲労回復の促進 などに効果があると期待されています。

研究で示唆される水素の効果

水素吸入がアスリートのパフォーマンスや疲労回復に与える影響については、近年多くの研究が行われています。

例えば、2019年に発表された研究では、自転車競技選手を対象に、水素吸入が運動パフォーマンスに与える影響を調査しました。その結果、水素吸入群はプラセボ群と比較して、最大酸素摂取量(VO2max)の改善が見られ、持久力向上に効果がある可能性が示唆されました。1)

他にも、水素吸入による運動後の疲労軽減やパフォーマンス低下の抑制効果なども報告されています。2)

水素吸入とアスリートに関して詳細な情報については、以下の記事もご参照ください。
>> 水素吸入がもたらすアスリートにとって嬉しい効果とは

水素吸入はドーピングに該当する?WADAの「禁止表国際基準」を読み解く

水素吸入はドーピングに該当する?WADAの「禁止表国際基準」を読み解く

WADAの役割と「禁止表国際基準」

世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は、スポーツにおけるドーピングを防止するために設立された国際機関です。

WADAは、競技会及び競技会外で禁止される物質や方法を定めた「禁止表国際基準(The Prohibited List)」を毎年発行しています。

水素は禁止物質に該当しない

結論から言うと、水素はドーピングに該当しません。

その根拠として、2024年現在の「禁止表国際基準」において、水素は禁止物質にリストアップされていないためです。

この基準には、興奮薬、ホルモン調節剤、ステロイド系の薬など、競技能力を向上させるために不正に使用される可能性のある物質や方法が数多く記載されています。しかし、水素の名前はどこにも見当たりません。

したがって、水素吸入や水素水の摂取は、現時点ではドーピング違反にはならず、アスリートでも安心して活用できます。

水素吸入の将来展望 – ドーピング認定の可能性は?

水素が今後ドーピングとなる可能性

現時点では、水素吸入が将来的にドーピングとして認定される可能性は低いと考えられます。

理由は以下の通りです。

水素がドーピングにならない理由
  • 検出の難しさ:水素は体内に吸収された後、速やかに体外へ排出されるため、使用した痕跡を検出することが非常に困難です。
  • 研究段階:水素の効果についてはまだ研究段階であり、明確なエビデンスが不足しています。
  • 自然発生:人の体内では、腸内細菌の働きなどにより水素が自然発生しています。そのため、摂取した水素と体内で発生した水素を明確に区別することは困難です。

ただし、今後研究が進み、例えば、特定の競技において水素吸入が著しくパフォーマンスを向上させることが明らかになったり、体内での水素の作用機序が詳細に解明され、人為的な摂取と自然発生の区別が可能になったりした場合、WADAが新たな規制を設ける可能性もゼロではありません。

水素吸入に関する研究の進展と、WADAの動向を注視しておきましょう。

今後、水素吸入がドーピングに認定されるようなことがあれば、当サイトでも最新情報をお伝えします。

まとめ:水素吸入はドーピングに該当せずアスリートも安心して活用できる

今回は、水素吸入がドーピングに該当するのか否かについてお伝えしました。

結論としては、2024年現在のWADAの「禁止表国際基準」において禁止物質に指定されておらず、ドーピングには該当しません。

なので、アスリートでも安心して使えます。

水素はまだ研究段階ではあるものの、アスリートの疲労回復やパフォーマンス向上の一助となる可能性が期待されています。

これからもどんどん研究が進み、効果の確立がされ、アスリートの間でも活用され高いパフォーマンスにつながることを期待しています。

参考文献
  1. LeBaron, T. W., Larson, A. J., Ohta, S., Mikami, T., Barlow, J., Bulloch, J., & DeBeliso, M. (2019). Acute Supplementation with Molecular Hydrogen Benefits Submaximal Exercise Indices. Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Crossover Pilot Study. Journal of lifestyle medicine9(1), 36–43. https://doi.org/10.15280/jlm.2019.9.1.36
  2. Shibayama, Y., Dobashi, S., Arisawa, T., Fukuoka, T., & Koyama, K. (2020). Impact of hydrogen-rich gas mixture inhalation through nasal cannula during post-exercise recovery period on subsequent oxidative stress, muscle damage, and exercise performances in men. Medical gas research10(4), 155–162. https://doi.org/10.4103/2045-9912.304222

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