一言まとめ
中性pHの水素水は、ヒト舌がん細胞の増殖を選択的に抑制し、ヒト線維肉腫細胞の浸潤を抑制した。これらの効果は、水素水による細胞内活性酸素種の消去作用によるものと示唆された。
3分で読める詳細解説
結論
中性pHの水素水は、がん細胞の増殖と浸潤を選択的に抑制し、がんの進行と浸潤を予防する物質として期待できる。
研究の背景と目的
がん細胞は正常細胞よりも多くの活性酸素種(ROS)を産生しており、ROSはがん細胞の増殖、浸潤、転移などに関与している。近年、水素を豊富に含む水が抗酸化作用を持ち、酸化ストレスを軽減する可能性があるとして注目されている。本研究では、特に中性pHの水素水が、がん細胞に対してどのような影響を与えるかを調査することを目的とした。
研究方法
- 電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、中性pHの水素水のヒドロキシルラジカル消去能を評価した。
- ヒト舌扁平上皮がん細胞株HSC-4とヒト舌上皮様正常細胞株DOKを用いて、中性pHの水素水のコロニー形成に対する影響を調べた。
- ヒト線維肉腫細胞株HT-1080を用いて、中性pHの水素水の細胞増殖と浸潤に対する影響を調べた。
- HSC-4細胞とHT-1080細胞における細胞内ROS量に対する中性pHの水素水の影響を、CDCFH-DA色素を用いて評価した。
研究結果
Appendix(用語解説)
- 活性酸素種(ROS):酸素を含む反応性の高い分子の総称。スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなどが含まれる。
- 電子スピン共鳴(ESR)法:不対電子を持つ分子(ラジカル)を検出・同定する分析法。
- コロニー形成試験:単一の細胞からコロニー(細胞集団)を形成する能力を評価する試験。
- 浸潤試験:がん細胞が基底膜を分解して組織内に侵入する能力を評価する試験。
- マトリゲル:基底膜の主要構成成分を含む再構成基質ゲル。
論文情報
タイトル
Neutral pH hydrogen-enriched electrolyzed water achieves tumor-preferential clonal growth inhibition over normal cells and tumor invasion inhibition concurrently with intracellular oxidant repression(中性pHの水素水は正常細胞よりがん細胞の選択的なクローン増殖抑制と細胞内酸化抑制を伴うがん浸潤抑制を同時に達成する)
引用元
Saitoh, Y., Okayasu, H., Xiao, L., Harata, Y., & Miwa, N. (2008). Neutral pH hydrogen-enriched electrolyzed water achieves tumor-preferential clonal growth inhibition over normal cells and tumor invasion inhibition concurrently with intracellular oxidant repression. Oncology research, 17(6), 247–255. https://doi.org/10.3727/096504008786991620
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