研究論文
Hydrogen gas therapy improves survival rate and neurological deficits in subarachnoid hemorrhage rats: a pilot study(水素ガス療法はくも膜下出血ラットの生存率と神経機能障害を改善する:パイロット研究)

水素吸入はくも膜下出血ラットの生存率と神経機能障害を改善する

一言まとめ

水素吸入治療(66%水素ガス、3L/分、2時間を3回実施)は、くも膜下出血(SAH)ラットモデルにおいて72時間の生存率を向上させ、24時間後の神経行動機能を改善することが示された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入治療はSAH後の生存率を向上させ、短期的な神経保護効果を持つ。

研究の背景と目的

くも膜下出血(SAH)は高い罹患率と死亡率を伴う疾患であり、効果的な治療法が限られている。SAH後の脳血管痙攣の逆転や遅発性脳虚血の治療が重要とされてきたが、これらの治療法だけでは十分な改善が得られないことが示されている。そこで、本研究では水素ガスの抗酸化作用、抗炎症作用、アポトーシス抑制作用に注目し、SAH後の神経機能と生存率に対する効果を検証することを目的とした。

研究方法

  • 対象:35匹の雄のSprague-Dawleyラット(体重300–320g、8–10週齢)を使用し、SAHモデルを作成。
  • グループ分け:ランダムにシャム群、SAH+空気群、SAH+水素群に分け、盲検法で実験を実施。
  • 水素ガス投与:SAHモデルラットに対して66%水素ガス(3L/分)を0.5時間後、8時間後、18時間後に2時間ずつ吸入
  • 評価項目:24時間後および72時間後の神経機能(前肢配置テスト)およびSAHグレードを評価し、72時間後の生存率を比較。

研究結果

  • 24時間後の結果:
    • SAHグレード: 空気群および水素群はシャム群と比較して有意に高い(p<0.05)。
    • 神経行動機能: 水素群の前肢配置スコアは空気群より有意に改善(p<0.05)。
  • 72時間後の結果:
    • SAHグレード: 空気群および水素群はシャム群と比較して有意に高いが、空気群と水素群の間に有意差はなし。
    • 神経行動機能: 空気群と水素群の間に有意差なし。
  • 生存率:
    • 空気群(66.7%)に対して、水素群(100%)の生存率は有意に高い(p=0.0115)。

Appendix(用語解説)

  • SAH: Subarachnoid Hemorrhage(くも膜下出血)
  • 抗酸化作用: 酸化ストレスを軽減する作用
  • 抗炎症作用: 炎症反応を抑制する作用
  • アポトーシス抑制作用: 細胞のプログラム化された死(アポトーシス)を抑制する作用

論文情報

タイトル

Hydrogen gas therapy improves survival rate and neurological deficits in subarachnoid hemorrhage rats: a pilot study(水素ガス療法はくも膜下出血ラットの生存率と神経機能障害を改善する:パイロット研究)

引用元

Camara, R., Matei, N., Camara, J., Enkhjargal, B., Tang, J., & Zhang, J. H. (2019). Hydrogen gas therapy improves survival rate and neurological deficits in subarachnoid hemorrhage rats: a pilot study. Medical gas research9(2), 74–79. https://doi.org/10.4103/2045-9912.260648

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