水素治療は放射線誘発性肺障害を緩和する

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結論

水素治療は放射線照射による肺障害を急性期から慢性期まで効果的に抑制する可能性がある。

研究の背景と目的

放射線治療はがん治療において広く利用されているが、肺などの臓器に対して深刻な副作用を引き起こす可能性がある。特に、放射線照射により生成される活性酸素種（ROS）は、細胞損傷や炎症を引き起こす主因とされている。本研究では、分子状水素（H2）が抗酸化作用を持ち、ROSの生成を抑制することで放射線による肺損傷を軽減できるかどうかを調査した。

研究方法

• 細胞実験:
  • ヒト肺上皮細胞株A549を使用し、10 Gyの放射線照射を行った。
  • H2を豊富に含むPBSまたは培地を用いて細胞を処理し、酸化ストレスおよび細胞損傷を評価した。
• 動物実験:
  • H2ガスの吸入（3% H2）およびH2を含む水の飲用による治療を実施し、急性期(照射後1-7日)と慢性期(照射後5ヶ月)の肺障害を評価した。
  • C57BL/6J系雌マウスを使用し、15 Gyの放射線を胸部に照射した。

研究結果

• 細胞実験：
  • 水素処理によりOHラジカルが有意に減少(p<0.01)。(Results, Fig. 1)
  • 細胞内の酸化ストレスマーカー(8-OHdG, 4-HNE)が有意に減少(p<0.05)。(Results, Fig. 2)
  • アポトーシス関連タンパク質(Bax, 活性型caspase-3)の発現が有意に抑制(p<0.05)。(Results, Fig. 3)
• 動物実験(急性期)：
  • 酸化ストレスマーカー(8-OHdG, MDA)が有意に減少(p<0.05)。(Results, Fig. 4)
  • アポトーシス細胞数(TUNEL陽性細胞)が有意に減少(p<0.01)。(Results, Fig. 4)
  • TGF-β1の発現が有意に抑制(p<0.05)。(Results, Fig. 4)
• 動物実験(慢性期)：
  • CTで観察される肺の高密度領域が有意に減少(p<0.05)。(Results, Fig. 5)
  • 組織学的な線維化スコア(Ashcroft score)が有意に改善(p<0.05)。(Results, Fig. 5)
  • III型コラーゲンの沈着が有意に減少(p<0.01)。(Results, Fig. 5)

Appendix（用語解説）

• ROS: 活性酸素種。細胞損傷を引き起こす酸素の反応性形態。
• 8-OH-dG: 酸化ストレスの指標として使用されるDNA損傷マーカー。
• 4-HNE: 脂質過酸化の最終生成物であり、細胞損傷の指標。
• TUNEL染色: アポトーシス（細胞死）の検出方法。

論文情報

タイトル

Hydrogen therapy attenuates irradiation-induced lung damage by reducing oxidative stress（水素治療は酸化ストレスを軽減することで放射線誘発性肺障害を緩和する）

引用元

Terasaki, Y., Ohsawa, I., Terasaki, M., Takahashi, M., Kunugi, S., Dedong, K., Urushiyama, H., Amenomori, S., Kaneko-Togashi, M., Kuwahara, N., Ishikawa, A., Kamimura, N., Ohta, S., & Fukuda, Y. (2011). Hydrogen therapy attenuates irradiation-induced lung damage by reducing oxidative stress. American journal of physiology. Lung cellular and molecular physiology, 301(4), L415–L426. https://doi.org/10.1152/ajplung.00008.2011

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