一言まとめ
ラットの慢性心不全モデルに対し、1日12時間、2週間の2%水素ガス吸入を行ったところ、心機能の改善、心筋の酸化ストレス・アポトーシス・線維化の抑制効果が見られた。この効果はp53シグナル経路の抑制が関与している可能性がある。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、慢性心不全ラットの心機能を改善し、酸化ストレスとアポトーシスを抑制する。この効果にはp53シグナル経路の抑制が関与している可能性がある。
研究の背景と目的
慢性心不全は、酸化ストレスの亢進とアポトーシスが病態の悪化に関与している。水素は選択的に活性酸素を除去する抗酸化物質として注目されているが、慢性心不全に対する効果は十分に検討されていない。本研究では、ラットの慢性心不全モデルに対する水素吸入の効果と、そのメカニズムについて検討することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 慢性心不全:心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せない状態が慢性的に続く病態。
- 酸化ストレス:活性酸素種が過剰に生成し、抗酸化機構のバランスが崩れた状態。タンパク質や脂質、DNAを酸化し、細胞障害を引き起こす。
- アポトーシス:プログラムされた細胞死。Baxなどのアポトーシス促進因子とBcl-2などの抑制因子のバランスにより制御される。
- p53:がん抑制遺伝子。DNA損傷などのストレスにより活性化し、細胞周期停止やアポトーシスを誘導する転写因子。
論文情報
タイトル
Inhalation of Hydrogen Attenuates Progression of Chronic Heart Failure via Suppression of Oxidative Stress and P53 Related to Apoptosis Pathway in Rats(ラットにおいて水素吸入は酸化ストレスとアポトーシス経路に関連するP53の抑制を介して慢性心不全の進行を緩和する)
引用元
Chi, J., Li, Z., Hong, X., Zhao, T., Bie, Y., Zhang, W., Yang, J., Feng, Z., Yu, Z., Xu, Q., Zhao, L., Liu, W., Gao, Y., Yang, H., Yang, J., Liu, J., & Yang, W. (2018). Inhalation of Hydrogen Attenuates Progression of Chronic Heart Failure via Suppression of Oxidative Stress and P53 Related to Apoptosis Pathway in Rats. Frontiers in physiology, 9, 1026. https://doi.org/10.3389/fphys.2018.01026
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