水素による肺膨張はラットの肺虚血再灌流傷害を軽減

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結論

水素吸入は肺移植後の虚血再灌流傷害を軽減する可能性がある。

研究の背景と目的

肺移植の成功には、ドナー肺の適切な保存が重要。従来の保存方法は限界があり、新しい保存方法が求められている。水素ガスは抗酸化作用や抗炎症作用があり、他の臓器移植でも保護効果が確認されている。本研究では、冷虚血期における水素ガスによる肺膨張がラットの肺移植後の虚血再灌流傷害を抑制するかを検討した。

研究方法

• 被験動物: Wistar系雄性ラット56匹
• 群分け: 以下の4群に無作為に分けた
  • Sham群: 開胸のみ実施
  • Control群: ドナー肺を2時間膨張させず保存
  • O2群: ドナー肺を40%酸素+60%窒素で膨張
  • H2群: ドナー肺を3%水素+40%酸素+57%窒素で膨張
• 実験手順
  • ドナー肺を収穫後、各群に割り当てたガスで10 ml/kgの容量で膨張し、20分ごとにガスを交換しながら2時間保存
  • その後、ラットに肺移植を実施し、2時間後に評価

研究結果

• 酸素化指標: 移植後120分時点でのPaO2/FiO2はH2群が最も高く、制御群より有意に改善（382 ± 23 mmHg、p < 0.05）
• 静的肺コンプライアンス: H2群の値はO2群より高く、制御群より有意に改善（17.40 ± 0.26 ml/kg、p < 0.05）
• 炎症反応:
  • IL-1β、IL-18の血清レベルはH2群が最も低かった（それぞれ90 ± 26 pg/ml、44 ± 12 pg/ml、p < 0.05）
  • 肺湿乾比（W/D比）はH2群が最も低かった（4.9 ± 0.6、p < 0.05）
• 酸化ストレス:
  • SOD活性はH2群が最も高かった（167 ± 34 U/mg protein、p < 0.05）
  • ROSレベルはH2群が最も低かった（24.1 ± 2.5、p < 0.05）
• 肺損傷スコア: H2群が最も低かった（図6参照）
• ピロトーシス関連タンパク質: H2群でのNLRP3、caspase-1 p20、GSDMD-Nの発現は最も低かった（p < 0.05）

Appendix（用語解説）

• 虚血再灌流傷害 (IRI): 血流再開時に組織が損傷する現象
• ピロトーシス: 炎症性の細胞死
• NLRP3インフラマソーム: ピロトーシスに関与するタンパク質複合体
• SOD (スーパーオキシドディスムターゼ): 酸化ストレスを緩和する酵素
• ROS (活性酸素種): 細胞損傷を引き起こす酸化ストレス分子

論文情報

タイトル

Lung Inflation With Hydrogen During the Cold Ischemia Phase Alleviates Lung Ischemia-Reperfusion Injury by Inhibiting Pyroptosis in Rats（冷虚血期における水素による肺膨張はラットの肺虚血再灌流傷害をピロトーシスの抑制により軽減する）

引用元

Zheng, P., Kang, J., Xing, E., Zheng, B., Wang, X., & Zhou, H. (2021). Lung Inflation With Hydrogen During the Cold Ischemia Phase Alleviates Lung Ischemia-Reperfusion Injury by Inhibiting Pyroptosis in Rats. Frontiers in physiology, 12, 699344. https://doi.org/10.3389/fphys.2021.699344

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