研究論文
水素吸入は敗血症誘発性心筋症を軽減する

水素吸入は敗血症誘発性心筋症を軽減する

一言まとめ

敗血症マウスモデルに2%の水素ガスを1時間吸入させたところ、7日生存率の改善、心筋障害の軽減、オートファジーとマイトファジーの促進が見られた。オートファジー阻害剤のBafilomycin A1を投与すると、水素の心筋保護効果が打ち消された。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、敗血症誘発性心筋症マウスにおいて、オートファジーとマイトファジーを促進することで心筋保護効果を発揮する。

研究の背景と目的

敗血症患者の40〜60%に敗血症誘発性心筋症(SIC)を発症し、死亡率が大幅に上昇する。SICの病態にはオートファジー機能不全が関与しているが、水素吸入がSICを改善するメカニズムは不明だった。そこで本研究は、SICマウスモデルを用いて、水素吸入の心筋保護効果とオートファジー制御の関連を探ることを目的とした。

研究方法

  • C57BL/6Jマウスを盲腸結紮穿刺(CLP)によりSICモデルを作製し、Sham群、Sham+H2群、CLP群、CLP+H2群の4群に無作為に分けた(各群n=32)。
  • H2群には2%の水素ガスを術後1時間目と6時間目に1時間吸入させた。
  • 各群20匹で7日生存率を観察し、6匹で24時間後の心筋病理学的スコア、血清トロポニンI濃度、オートファジー関連タンパク質発現量を評価した。
  • 別の4群(CLP群、CLP+BafA1群、CLP+H2群、CLP+H2+BafA1群)を設定し、BafA1群には術後1時間目にオートファジー阻害剤Bafilomycin A1を腹腔内投与した。

研究結果

  • CLP群と比較して、CLP+H2群では以下の結果が得られた:
    • 7日生存率の有意な改善(40% vs 75%, p<0.05)
    • 心筋組織の炎症の改善と血清トロポニンIレベルの低下(p<0.05)
    • オートファジーの亢進(LC3-II/LC3-I比の増加、p62の減少)とマイトファジータンパク質の減少(p<0.05)
  • CLP+H2+BafA1群では、CLP+H2群と比較して、オートファジーレベルと7日生存率の低下、心筋組織障害とトロポニンIレベルの増加が見られ、水素の保護効果が打ち消された(p<0.05)。

Appendix(用語解説)

  • オートファジー:細胞内のタンパク質やオルガネラを分解・リサイクルする機構
  • マイトファジー:ミトコンドリアを選択的に分解除去するオートファジーの一種
  • LC3, p62:オートファジーのマーカータンパク質
  • PINK1, Parkin:マイトファジーを制御するタンパク質
  • Bafilomycin A1:オートファゴソームとリソソームの融合を阻害するオートファジー阻害剤

論文情報

タイトル

Molecular hydrogen attenuates sepsis-induced cardiomyopathy in mice by promoting autophagy(水素分子は、オートファジーを促進することでマウスの敗血症誘発性心筋症を軽減する)

引用元

Cui, Y., Li, Y., Meng, S., Song, Y., & Xie, K. (2024). Molecular hydrogen attenuates sepsis-induced cardiomyopathy in mice by promoting autophagy. BMC anesthesiology24(1), 72. https://doi.org/10.1186/s12871-024-02462-4

専門家のコメント

あやたい 先生のアバター

あやたい 先生

本研究は、敗血症誘発性心筋症マウスモデルを用いて、水素吸入の心筋保護効果とそのメカニズムを探った興味深い研究です。水素吸入が、オートファジーとマイトファジーを促進することで、心筋障害を軽減し生存率を改善したことを明らかにしました。さらに、オートファジー阻害剤の投与により水素の効果が打ち消されたことから、オートファジーの重要性も示唆されました。今後、水素のオートファジー制御メカニズムのさらなる解明が期待されます。敗血症の新たな治療法開発につながる可能性のある研究だと思います。

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