一言まとめ
進行大腸がん患者55名に1日3時間の水素吸入と化学療法を併用したところ、末梢血中の疲弊したPD-1+CD8+T細胞が減少し、活性化したPD-1-CD8+T細胞が増加して、無増悪生存期間と全生存期間が改善した。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入はPD-1+CD8+T細胞の不均衡を是正することで予後を改善する可能性がある。
研究の背景と目的
がん患者では、腫瘍抗原の持続的刺激によりCD8+T細胞が疲弊し、PD-1の発現が亢進して免疫活性が低下するため予後不良となる。最近、水素分子がPGC-1αを活性化することが報告された。PGC-1αはミトコンドリア機能不全により不活性化し、CD8+T細胞の疲弊を引き起こす。そこで本研究は、水素吸入がCD8+T細胞の疲弊を回復させ、ステージIV大腸がん患者の予後を改善するかを調査した。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- CD8+T細胞: 細胞傷害性T細胞。ウイルス感染細胞やがん細胞を攻撃する。
- PD-1: programmed cell death 1。T細胞の活性化を抑制する受容体。
- 無増悪生存期間: 治療開始から病勢が進行するまでの期間。
- 全生存期間: 治療開始から死亡するまでの期間。
論文情報
タイトル
Hydrogen gas restores exhausted CD8+ T cells in patients with advanced colorectal cancer to improve prognosis(進行大腸がん患者において水素ガスが疲弊したCD8+T細胞を回復させ予後を改善する)
引用元
Akagi, J., & Baba, H. (2019). Hydrogen gas restores exhausted CD8+ T cells in patients with advanced colorectal cancer to improve prognosis. Oncology reports, 41(1), 301–311. https://doi.org/10.3892/or.2018.6841
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