一言まとめ
ブタに100%水素を単回吸入させた際の、体内での水素の血中濃度の変化について頸動脈、門脈、下大静脈の三箇所で経時的に評価した。吸入された水素分子は移流拡散により全身に運ばれ、動的に代謝されることが初めて明らかになった。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入により、3分後には動脈血濃度が1/40程度まで低下し、10分後には静脈系で優位となり、60分後には動脈血中では定常状態である。
研究の背景と目的
水素吸入は近年注目されており、有用性が認識されているにも関わらず、その薬物動態については十分に解明されていない。本研究では、水素ガスが肺で吸収されて血中に入った後の過程を評価すべく行われた。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 移流拡散:水素が血流に運ばれながら(移流)、血管外の組織に拡散していくこと。
- 頚動脈(CA):首の動脈。全身に血液を送り出す。
- 門脈(PV):腸管から吸収された栄養分を肝臓に運ぶ静脈。
- 肝静脈上下大静脈(IVC):肝臓を通過した血液が心臓に戻る静脈。
論文情報
タイトル
Pharmacokinetics of a single inhalation of hydrogen gas in pigs(ブタにおける水素分子単回吸入の体内動態)
引用元
Sano, M., Ichihara, G., Katsumata, Y., Hiraide, T., Hirai, A., Momoi, M., Tamura, T., Ohata, S., & Kobayashi, E. (2020). Pharmacokinetics of a single inhalation of hydrogen gas in pigs. PloS one, 15(6), e0234626. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0234626