一言まとめ
新生児低酸素性虚血性脳損傷ラットモデルに対し、水素ガス吸入を30分、60分、90分行ったところ、脳の炎症反応や神経細胞のアポトーシスが抑制され、長期の空間記憶障害が改善した。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、炎症反応とアポトーシスを抑制することで神経保護効果を発揮する。
研究の背景と目的
新生児低酸素性虚血性脳損傷(HIBD)は、新生児の死亡や障害の主要原因の一つである。酸化ストレスがHIBDの主な病態進行に関与しており、水素は抗酸化作用を持つことから、HIBDの治療に利用できる可能性がある。しかし、新生児HIBDに対する水素の神経保護メカニズムは十分に解明されていない。本研究は、HIBDラットモデルに対する水素吸入の効果とそのメカニズムを検討することを目的とした。
研究方法
生後7日目のSDラット(雌雄)を用い、左総頚動脈結紮と低酸素負荷によりHIBDモデルを作成。HI後すぐに、3%水素ガスを30分、60分、90分吸入させた。72時間後に脳を採取し、ニッスル染色とTUNEL染色で形態学的損傷を評価。IL-1β、NF-κB p65、Iba-1の発現を調べ、急性炎症を評価。P-JNK、p53、NeuNの発現を調べ、神経細胞アポトーシスを評価。術後36日目にモリス水迷路試験で神経行動機能を評価した。
研究結果
Appendix(用語解説)
- 低酸素性虚血性脳損傷(HIBD):低酸素・虚血により引き起こされる新生児の脳障害。
- ミクログリア:脳の免疫担当細胞。過剰に活性化すると炎症を引き起こす。
- アポトーシス:プログラムされた細胞死。
- IL-1β:炎症性サイトカインの一種。炎症反応を促進する。
- NF-κB p65:炎症反応に関与する転写因子。
- Iba-1:活性化ミクログリアのマーカー。
- P-JNK:アポトーシスを誘導するシグナル伝達分子。
- p53:アポトーシスを促進する転写因子。
- NeuN:成熟ニューロンのマーカー。
論文情報
タイトル
Hydrogen inhalation protects hypoxic-ischemic brain damage by attenuating inflammation and apoptosis in neonatal rats(新生児ラットにおいて水素ガス吸入は炎症とアポトーシスを軽減することで低酸素性虚血性脳損傷を保護する)
引用元
Wu, G., Chen, Z., Wang, P., Zhao, M., Fujino, M., Zhang, C., Zhou, W., Hirano, S. I., Li, X. K., & Zhao, L. (2019). Hydrogen inhalation protects hypoxic-ischemic brain damage by attenuating inflammation and apoptosis in neonatal rats. Experimental biology and medicine (Maywood, N.J.), 244(12), 1017–1027. https://doi.org/10.1177/1535370219855399
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