一言まとめ
ヒトの大腸がん細胞を様々な水素濃度の環境下で育てたところ、低い濃度(30%)の水素でもがんの成長が抑えられた。さらに、水素濃度を高くする(50%以上)と、抑制効果が見られるがん細胞の種類が増え、大腸がん細胞を移植したマウスに水素を吸入させたところ、腫瘍の成長が大幅に抑えられた。
3分で読める詳細解説
結論
水素は大腸がんに対して、pAKT/SCD1経路を抑制することで強力な腫瘍抑制効果を発揮する。
研究の背景と目的
大腸がんは世界的に罹患率・死亡率の高いがん種の一つである。近年の治療法の進歩により予後は改善しつつあるが、手術や化学療法による副作用に悩まされる患者も多い。そこで、新たな治療戦略として、抗酸化・抗炎症・抗アポトーシス作用をもつ水素に着目し、大腸がんに対する水素の腫瘍抑制効果とそのメカニズムを探ることを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- pAKT:リン酸化(活性化)されたAKTタンパク質。細胞の生存やアポトーシス抑制に関わる。
- SCD1:ステアロイルCoAデサチュラーゼ1。飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に変換する律速酵素。がんの進展や予後不良に関与。
- CCK-8アッセイ:細胞数に比例して発色する試薬を用いて細胞増殖を測定する方法。
- コロニー形成アッセイ:細胞をプレートに播種後、一定期間培養し形成されたコロニー数を計測することで増殖能を評価する方法。
- IHC染色:組織切片に抗体を反応させ、特定のタンパク質の発現を可視化する手法。
論文情報
タイトル
Zhang, X., Tao, G., Zhao, Y., Xing, S., Jiang, J., Liu, B., & Qin, S. (2022). Molecular Hydrogen Inhibits Colorectal Cancer Growth via the AKT/SCD1 Signaling Pathway(水素分子はAKT/SCD1シグナル経路を介して大腸がんの増殖を抑制する)
引用元
Zhang, X., Tao, G., Zhao, Y., Xing, S., Jiang, J., Liu, B., & Qin, S. (2022). Molecular Hydrogen Inhibits Colorectal Cancer Growth via the AKT/SCD1 Signaling Pathway. BioMed research international, 2022, 8024452. https://doi.org/10.1155/2022/8024452
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