一言まとめ
がん治療における水素分子療法に関する27件の研究を系統的にレビューした結果、水素は抗酸化作用、抗腫瘍効果、アポトーシス誘導などの効果を示し、単独療法としても併用療法としても有効性が認められた。
3分で読める詳細解説
結論
水素分子療法はがん治療において、生存率向上、生活の質改善、腫瘍縮小に効果的な補完療法となる可能性がある。
研究の背景と目的
がんは現在の治療法(化学療法、放射線療法、手術など)では、深刻な副作用を生じずに完治させることが難しい。酸化ストレスががんの病因に関連しており、抗酸化物質の減少によるレドックスバランスの崩れがある中で、効果的な抗酸化治療を見つけることは困難だった。水素は地球上で最も軽い元素であり、有害な活性酸素種(ROS)を選択的に還元する効果的な抗酸化物質として注目されている。本研究は、がん治療における水素分子療法の機序、治療効果、全体的な有効性に関する知見を様々な研究から総括することを目的としている。
研究方法
Cochrane、PubMed、Google Scholarを検索エンジンとして使用し、水素分子療法とがんに関連する論文を系統的に検索した。「分子状水素」「水素療法」「水素ガス」「水素水」「水素吸入」「水素リッチ」と「がん」「癌腫」「腫瘍」などのキーワードを用いて検索を実施。
677件の検索結果から、27件の論文が選択基準を満たし、このシステマティックレビューに含まれた。治療法は主に3つ(水素水、水素生理食塩水、水素ガス)に分類された。
研究結果
Appendix(用語解説)
- 活性酸素(reactive oxygen species; ROS):酸素を含む不安定で反応性の高い分子。過剰なROSは酸化ストレスを引き起こし、がんの発生や進行に関与する。
- アポトーシス:プログラムされた細胞死。がん細胞のアポトーシスを促進することは、がん治療の重要な戦略の1つ。
- 全生存期間(overall survival; OS):治療開始からあらゆる原因による死亡までの期間。
- 無増悪生存期間(progression-free survival; PFS):治療開始から病勢が進行するまでの期間。
- 5-フルオロウラシル(5-FU):抗がん剤の1つ。DNA合成を阻害することでがん細胞の増殖を抑制する。
論文情報
タイトル
A Systematic Review of Molecular Hydrogen Therapy in Cancer Management(がん治療における分子状水素療法の系統的レビュー)
引用元
Mohd Noor, M. N. Z., Alauddin, A. S., Wong, Y. H., Looi, C. Y., Wong, E. H., Madhavan, P., & Yeong, C. H. (2023). A Systematic Review of Molecular Hydrogen Therapy in Cancer Management. Asian Pacific journal of cancer prevention : APJCP, 24(1), 37–47. https://doi.org/10.31557/APJCP.2023.24.1.37
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