水素ガス吸入中に温熱機器を併用し爆発した事故の症例報告
結論
62歳の女性が自宅で水素ガスを吸入しながら電磁波温熱療法機器を同時に使用し、爆風による肺挫傷(肺の組織が傷つくこと)を発症した。幸い9日後に自然回復し、後遺症は残っていない。
事故の背景
水素などの可燃性ガスの吸入は、爆発のリスクが報告されている。本症例は、乳がん術後の再発と診断された62歳の女性である。自宅で2つの民間療法機器を同時に使用していた。
- 水素ガス吸入器: 鼻カニューレ(鼻に装着する管)を通じて水素ガスを吸入
- 電磁波温熱療法機器: 乳がんの患部に電磁波を照射する機器
吸入中に突然、胸部で爆発音がし、焦げたにおいを感じた。その後、喀血(血の混じった痰が出ること)を繰り返したため、海老名総合病院の救急外来を受診した。
検査所見と経過
CT検査で「花火状」の肺挫傷が判明
CT検査の結果、肺のすべての区画(肺葉)に肺挫傷が見つかった。損傷は気管支の末端にある肺胞を中心に広がっており、画像では花火のような特徴的なパターンを示していた。診断名は「吸入燃焼性肺損傷」、つまり吸い込んだガスが燃えて肺が傷ついた状態である。
実際のCT画像を以下に示す。

血液検査や呼吸状態に大きな異常なし
血液中の酸素濃度を調べる検査(動脈血ガス分析)では異常がなく、酸素投与の必要もなかった。血液の固まりやすさなどを含む血液検査でも異常は見られていない。
9日後に肺挫傷が消失
喀血は自然に消失した。9日目のCT再検査では肺挫傷の消失が確認され、後遺症は残らなかった。
考察と今後の課題
爆風による肺損傷(blast lung injury)は、家庭内で起こることは極めてまれである。本症例では、自宅で鼻カニューレを通じて水素ガスを吸入しながら、電磁波を照射する温熱療法機器を同時に使用していた際に突然爆発した。この症例は、民間療法に関連した可燃性ガスの吸入による肺損傷が、家庭環境でも起こり得ることを示す。
しかし、本症例は1例の症例報告であり、爆発が起きた詳細な条件(水素ガスの流量や濃度、温熱機器との距離など)は報告されていない。今後、家庭用水素吸入器の安全基準のさらなる整備が求められる。
すいかつねっと編集部の感想
本論文は、水素ガス吸入中に温熱療法機器を併用したことで爆発が起きた、極めてまれな症例報告です。水素吸入そのものが危険なのではなく、可燃性ガスである水素を火気や発熱機器の近くで使用したことが原因と思われます。
健康成人における長期安全性試験では、適切な条件下での水素吸入に重大な有害事象は報告されていません。また、動物実験では水素吸入が胸部外傷後の肺挫傷を軽減する効果も示されています。適切な条件下であれば水素は安全性が高いとされていますが、可燃性であるという基本的な性質を忘れてはなりません。
水素吸入器を家庭で使用する際は、メーカーの取扱説明書の安全上の注意を必ず守り、火気・電磁波機器・ヒーターの近くでは使用しないことが大切です。
用語解説
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 肺挫傷 | 爆風や強い衝撃によって肺の組織が傷つくこと。出血や炎症を伴い、重症の場合は呼吸困難を引き起こす |
| 鼻カニューレ | 鼻の穴に装着する細い管。酸素吸入や水素ガス吸入に使用される |
| 爆風肺損傷(blast lung injury) | 爆発の衝撃波によって引き起こされる肺の損傷。通常は戦争や爆破事故で発生する |
| 動脈血ガス分析 | 動脈から採血し、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度を測定する検査。呼吸機能の評価に使われる |
| 喀血 | 気道や肺から出血し、血の混じった痰を咳とともに吐き出すこと |
| 電磁波温熱療法 | 電磁波を体に照射して患部を温める療法。がんの補助療法として一部で使われている |
| 吸入燃焼性肺損傷 | 可燃性ガスを吸入中に爆発が起き、気道を通じた爆風で肺が損傷すること |
論文情報
論文タイトル
A case of lung injury due to a hydrogen explosion caused by the simultaneous use of two home folk remedies devices(2つの家庭用民間療法機器の同時使用による水素爆発で生じた肺損傷の1例)
引用元

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