研究論文
Nanoquadruplex-driven hydrogen therapy: NIR-controlled release for targeted cancer ferroptosis(ナノ四重奏体による水素療法:近赤外線で制御される放出が標的がん細胞のフェロトーシスを誘発する)

がん細胞を効率的に死滅させる新しい水素療法を確立

一言まとめ

パラジウムとセレンを用いた革新的な水素貯蔵材料を開発し、近赤外線照射によってがん細胞内で毒性の高いセレン化水素を生成させることで、がん細胞特有の死(フェロトーシス)を効果的に誘導し、腫瘍の成長を抑制することに成功した。

3分で読める詳細解説

結論

近赤外線で水素放出を精密に制御する新素材により、がん細胞を効率的に死滅させる新しい水素療法を確立した。

研究の背景と目的

水素療法は副作用の少ない新しいがん治療法として注目されているが、水素を効率的に貯蔵し、患部で狙い通りに放出させる技術が不足していた。 一方、がん細胞内で鉄依存的に脂質が酸化して細胞が死ぬ「フェロトーシス」という現象が知られている。本研究は、水素分子とセレンを組み合わせることで、細胞内の還元バランスを崩し、このフェロトーシスを強力に引き起こす新しいナノ材料を開発することを目的とした。

研究方法

  • 対象: ヒト胃がん細胞株(SGC-7901)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ならびにSGC-7901細胞を移植したマウスモデル(BALB/cヌードマウス)。
  • 介入方法: パラジウム・セレン・ナノ四重奏体(PdH0.2)4Seを投与。
  • 投与量: 細胞実験では最大200μg/mL。動物実験では1mg/mLを100µL、1、3、7、12日目に静脈注射。
  • 制御: 808nmの近赤外線(NIR)レーザー(出力 $1.0W/cm2)を5分間照射し、水素放出を誘発。
  • 対照群: 生理食塩水(PBS)、NIR照射のみ、水素を含まないPd粒子、セレンを含まない $PdH_{0.2}$ 粒子などの複数の群を設定。
  • 評価方法: 細胞生存率(CCK-8法)、腫瘍の体積と重量の測定、活性酸素(ROS)の生成量、フェロトーシス関連タンパク質(GPX4等)の解析を実施。

研究結果

  • 水素放出と発熱: (PdH0.2)4Seに近赤外線を照射すると、温度が最大53.9℃まで上昇し、これに連動して高い還元力を持つ水素分子が急速に放出された。
  • がん細胞の死滅: (PdH0.2)4Seと近赤外線照射を組み合わせた群では、がん細胞の生存率が濃度依存的に著しく低下した(200μg/mLで約30%まで減少)。
  • 腫瘍成長の抑制: マウス実験において、照射群の腫瘍重量は未治療群と比較して極めて低く、強力な抗腫瘍効果が確認された(p < 0.001)。
  • フェロトーシスの誘発: 照射により細胞内の活性酸素(ROS)が過剰生成され、フェロトーシスを防ぐタンパク質(GPX4、SLC7A11)が減少、促進するタンパク質(ACSL4、COX-2)が増加した。
  • 血管新生の阻害: がん細胞の増殖指標であるKi67陽性細胞が55%減少し、新しい血管の形成(CD31陽性)も約35%抑制された。
  • 安全性: 正常な細胞(L929線維芽細胞)に対しては毒性がほとんど見られず、マウスの体重や主要臓器(心、肝、脾、肺、腎)の機能にも異常は認められなかった。
  • 考察: 本材料は、水素放出に伴って生成されるセレン化水素(H_2Se)がグルタチオン(GSH)を枯渇させることが、強力なフェロトーシス誘導の鍵であると推察される。

Appendix(用語解説)

  • フェロトーシス: 鉄が関与する過酸化脂質の蓄積によって引き起こされる、細胞死の一種。通常のがん治療に抵抗性を持つがん細胞にも有効な可能性がある。
  • 活性酸素種(ROS): 体内で生成される非常に反応性が高い酸素分子。過剰になると細胞の脂質やDNAを傷つけ、死に至らしめる。
  • 近赤外線(NIR): 生体透過性が高い光。これを利用することで、体の外側から特定の部位にあるナノ材料を反応させることができる。
  • GPX4: 細胞内の酸化を防ぐ重要な酵素。この機能が阻害されるとフェロトーシスが進行する。

論文情報

タイトル

Nanoquadruplex-driven hydrogen therapy: NIR-controlled release for targeted cancer ferroptosis(ナノ四重奏体による水素療法:近赤外線で制御される放出が標的がん細胞のフェロトーシスを誘発する)

引用元

Dai, C., He, Y., Lu, H., Feng, X., Long, N., Song, Q., Li, Y., Wang, Y., Martin, L. L., Fan, C., & Sun, D. (2026). Nanoquadruplex-driven hydrogen therapy: NIR-controlled release for targeted cancer ferroptosis. Biomaterials326, 123635. https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2025.123635

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