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研究報告

水素吸入は敗血症性心筋症から心臓を保護する

Molecular hydrogen protects against sepsis-induced cardiomyopathy through improving Golgi stress-mediated autophagy, inflammation and apoptosis(水素分子によるゴルジ体ストレスの抑制を介した敗血症性心筋症の保護効果)
敗血症モデルマウスに対して濃度2%の水素吸入を行ったところ、ゴルジ体ストレスの抑制を介して心筋の炎症や細胞死が軽減され、生存率と心機能が有意に改善した。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

濃度2%の水素吸入は、ゴルジ体ストレスの抑制を介して敗血症性心筋症から心臓を保護する。

研究の背景と目的

敗血症性心筋症(SIC)は、敗血症患者における死亡の主要な原因であるが、効果的な治療法は確立されていない。この病態には、細胞内の小器官である「ゴルジ体」の機能不全(ゴルジ体ストレス)が深く関与していると考えられているが、その詳細なメカニズムは不明であった。本研究は、濃度2%の水素吸入がゴルジ体ストレスを抑制することでSICを改善するかどうかを検証し、その背後にある具体的な分子メカニズムを解明することを目的とした。

研究方法

  • 対象者(動物): オスのC57BL/6Jマウス(6~8週齢、体重25~30g)を使用。
  • モデル: 盲腸結紮穿刺(CLP)手術を行い、敗血症および敗血症性心筋症を誘発した。
  • 介入方法:
    • 手術の1時間後および6時間後の計2回、それぞれ1時間ずつ濃度2%の水素吸入を実施した。
    • 水素ガスは水素発生装置を用いて生成し、空気と混合して濃度を調整した。
  • 対照群の設定:
    • 偽手術群(Sham)
    • 敗血症誘導群(CLP)
    • 敗血症誘導+水素吸入群(CLP + H₂)
    • 敗血症誘導+ゴルジ体ストレス誘発剤(Brefeldin A)投与群など、計4つのグループ比較を行った。
  • 評価方法: 7日間生存率、心エコーによる心機能評価、心筋障害酵素(CK-MB, cTnI)の測定、HE染色および免疫蛍光染色による組織学的評価、電子顕微鏡によるゴルジ体形態の観察などを実施した。

研究結果

  • 生存率と心機能の改善: 敗血症誘導群では7日間生存率が著しく低下したが、水素吸入群では生存率が有意に改善した。また、心機能の指標である左室駆出率(LVEF)や左室内径短縮率(LVFS)も、水素吸入により回復した。
  • 心筋障害の軽減: 血液中の心筋障害マーカー(CK-MB、cTnI)および病理組織スコアは、水素吸入により有意に低下した。
  • ゴルジ体ストレスの抑制: 敗血症誘導群ではゴルジ体の構造が断片化し、ストレス関連タンパク質(GOLPH3)が増加していたが、水素吸入によりゴルジ体の形態が維持され、ストレスマーカーが正常化した。
  • 下流シグナルの改善: 水素吸入は、ゴルジ体ストレスによって引き起こされる過剰なオートファジー、炎症(TNF-α、IL-6の減少)、およびアポトーシス(細胞死)を抑制した。
  • 効果の検証: ゴルジ体ストレスを強制的に引き起こす薬剤(Brefeldin A)を投与したところ、水素吸入による生存率向上や心筋保護効果が打ち消された(リバースされた)。これにより、水素分子の効果がゴルジ体ストレスの制御に依存していることが裏付けられた。
  • 考察と限界:
    • 本研究により、水素分子がゴルジ体ストレスを軽減し、それに関連する炎症や細胞死を抑えることで心臓を保護することが示された。
    • 限界点として、ゴルジ体の形態変化をリアルタイムで観察していない点や、水素分子がゴルジ体ストレスの上流でどのように作用しているかの詳細なメカニズムまでは解明されていない点が挙げられる。また、臨床応用にはさらなる検討が必要である 。

Appendix(用語解説)

  • 敗血症性心筋症 (SIC): 重篤な感染症(敗血症)に伴って心臓のポンプ機能が低下する合併症。死亡率が高く、治療が難しい。
  • ゴルジ体: 細胞の中に存在する小器官の一つ。タンパク質を加工し、適切な場所に配送する役割を持つ。ここに異常(ストレス)が生じると細胞死や炎症の原因となる。
  • オートファジー: 細胞が自らの内部にあるタンパク質などを分解・リサイクルする仕組み。適度であれば細胞を守るが、過剰になると細胞障害を引き起こすことがある。
  • アポトーシス: 管理・調節された細胞の自殺(細胞死)。不要になったり異常が生じた細胞を取り除くための仕組み。
  • 盲腸結紮穿刺 (CLP): マウスなどの実験動物において、盲腸を縛って(結紮)針で穴を開ける(穿刺)ことで、腹膜炎および敗血症を人工的に引き起こす標準的な実験手法。

論文情報

タイトル

Molecular hydrogen protects against sepsis-induced cardiomyopathy through improving Golgi stress-mediated autophagy, inflammation and apoptosis(水素分子によるゴルジ体ストレスの抑制を介した敗血症性心筋症の保護効果)

引用元

Meng, S., Liu, J., Luo, Y., Fan, Y., Wang, Z., Song, Y., Pei, S., Huang, X., Zhao, L., & Xie, K. (2025). Molecular hydrogen protects against sepsis-induced cardiomyopathy through improving Golgi stress-mediated autophagy, inflammation and apoptosis. British journal of pharmacology, 182(22), 5627–5646. https://doi.org/10.1111/bph.70132

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公開日:2025/12/20
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/12/20
最終更新日:2026/02/11
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