一言まとめ
マウスとヒト培養細胞を用いた実験で、4%水素吸入が敗血症による急性肺損傷を軽減し、チオレドキシン1の活性化を介して組織因子とMMP-9の活性を抑制することで炎症反応を減少させることが明らかになった。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は敗血症による急性肺損傷に対して保護効果を示し、チオレドキシン1の活性化が重要な機序である。
研究の背景と目的
敗血症は全身の炎症反応症候群を引き起こし、死亡率が40%に達する重篤な病態である。その中でも急性肺損傷は敗血症の早期に発生し、主要な死因の一つとなっている。水素吸入は炎症性肺損傷に有効な治療法として注目されているが、その詳細な分子機構は不明だった。本研究は、水素がエンドトキシン誘発性肺損傷をどのように軽減するかのメカニズムを解明し、臨床応用への基礎データを提供することを目的とした。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- エンドトキシン: 細菌の細胞壁成分で、体内に入ると強い炎症反応を引き起こす物質
- チオレドキシン1(Trx1): 体内の酸化ストレスを調節する重要なタンパク質
- 組織因子(TF): 血液凝固を開始する重要な因子で、炎症反応でも重要な役割を果たす
- MMP-9: 血管基底膜や細胞外マトリックスを分解する酵素で、炎症や血管透過性に関与
- LPS(リポポリサッカライド): 細菌由来の毒素で、実験的に敗血症を誘発するために使用される
- 好中球: 白血球の一種で、感染や炎症の際に最初に反応する免疫細胞
論文情報
タイトル
Hydrogen Attenuates Endotoxin-Induced Lung Injury by Activating Thioredoxin 1 and Decreasing Tissue Factor Expression(水素がチオレドキシン1を活性化し組織因子発現を減少させることでエンドトキシン誘発性肺損傷を軽減する)
引用元
Li, Q., Hu, L., Li, J., Yu, P., Hu, F., Wan, B., Xu, M., Cheng, H., Yu, W., Jiang, L., Shi, Y., Li, J., Duan, M., Long, Y., & Liu, W. T. (2021). Hydrogen Attenuates Endotoxin-Induced Lung Injury by Activating Thioredoxin 1 and Decreasing Tissue Factor Expression. Frontiers in immunology, 12, 625957. https://doi.org/10.3389/fimmu.2021.625957
専門家のコメント
まだコメントはありません。