一言まとめ
異なる濃度の水素水(200、400、800ppb)がルーメン発酵と細菌叢に与える影響を調査した結果、400ppbの水素水は微生物タンパク質合成を促進し、メタン産生を減少させ、反芻動物の栄養効率向上と環境負荷軽減に有効である可能性が示された。
3分で読める詳細解説
結論
水素水400ppbはルーメン発酵を改善し、微生物タンパク質合成を促進しながらメタン排出を抑制する持続可能な飼料添加物として有効である。
研究の背景と目的
反芻動物は繊維質の植物を人間が消費できる肉や乳製品に変換できるが、このプロセスでは必然的にメタン(強力な温室効果ガス)が発生する。効率的な牛は非効率的な牛と比較して20%少ないメタンを生成するという研究結果がある。本研究は、動物生産効率を維持しながらメタン生成を減少させるためのルーメン微生物活性の調節戦略を探ることを目的としている。水素水は加圧溶解によって水素分子ガスを過飽和した飲料水であり、医療、農業、スポーツなど多くの分野で応用されているが、反芻動物への応用研究は少ない。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- 微生物タンパク質(MCP):ルーメン内の微生物によって合成されるタンパク質で、宿主動物にとって重要なタンパク質源となる。
- 揮発性脂肪酸(VFA):ルーメン内で炭水化物が発酵される際に生成される酸で、反芻動物のエネルギー需要の70~80%を供給する。
- メタン生成:ルーメン内のメタン生成古細菌が水素と二酸化炭素を利用してメタンを生成するプロセス。
- Firmicutes門:セルロースをVFAに分解してエネルギーを宿主に供給する能力を持つ細菌門。
- Bacteroidota門:炭水化物やタンパク質を分解して宿主の栄養利用効率を高める細菌門。
- Streptococcus:本研究では、ルーメン内での窒素利用に独自の利点を持ち、メタン生成と負の相関がある細菌属。
- ppb(parts per billion):10億分の1を表す濃度単位。
論文情報
タイトル
Hydrogen-rich water 400ppb as a potential strategy for improving ruminant nutrition and mitigating methane emissions(水素水400ppbによる反芻動物の栄養改善とメタン排出削減の可能性)
引用元
Mao, K., Lu, G., Zang, Y., Qiu, Q., Zhao, X., Ouyang, K., Qu, M., & Li, Y. (2024). Hydrogen-rich water 400ppb as a potential strategy for improving ruminant nutrition and mitigating methane emissions. BMC microbiology, 24(1), 469. https://doi.org/10.1186/s12866-024-03638-1
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