研究論文
Hydrogen gas inhalation ameliorates glomerular enlargement after hypoxic-ischemic insult in asphyxiated piglet model(水素吸入は、新生児仮死モデルブタにおける低酸素性虚血性傷害後の糸球体肥大を軽減する)

水素吸入は低酸素性虚血性傷害後の腎障害を軽減する

一言まとめ

新生児仮死モデルブタへの低酸素性虚血性傷害後24時間の水素吸入(2.1-2.7%)は、腎臓の糸球体細胞数の増加や近位尿細管の内腔狭窄といった組織学的損傷を軽減した。

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、低酸素性虚血性傷害後の新生仔ブタの腎障害を軽減する可能性がある。

研究の背景と目的

新生児仮死の30-70%で急性腎障害(AKI)が発生すると報告されている。水素分子はその強力な抗酸化特性から新生児医療における主要な研究対象となっているが、水素分子がAKIを改善する能力については不明であった。本研究は、低酸素性虚血(HI)傷害後5日目のブタ腎皮質の組織病理学的損傷を調査し、水素吸入がこれらの腎損傷を軽減できるかどうかを明らかにすることを目的とした。

研究方法

  • 対象者: 20匹の新生仔ブタ。以下の3群に分けられた。
    • コントロール群(傷害なし、n=6)
    • HI群(HI傷害のみ、n=8)
    • HI-H2群(HI傷害後に水素吸入、n=6)
    • 選定基準・除外基準:論文内に詳細な記述なし。新生仔ブタを実験モデルとして使用。
  • 介入方法:
    • HI-H₂群に対し、HI傷害後に2.1-2.7%の水素を24時間吸入させた。
    • 摂取/吸入量、頻度、実施時間、流量:水素濃度2.1-2.7%、24時間持続吸入。具体的な総量や流量については論文内に記述なし。
  • 対照群の設定:
    • コントロール群:HI傷害も水素吸入も行わない。
    • HI群:HI傷害のみを行い、水素吸入は行わない。
  • 評価方法:
    • HI傷害後5日目に腎皮質の組織病理学的損傷を評価。
    • 主な評価項目:総糸球体細胞数、近位尿細管の内腔狭窄。

研究結果

  • 主な結果
    • 糸球体総細胞数はHI群で他の2群より有意に多く、HI-H2群と対照群では差がなかった(平均値±標準偏差:対照群 68.2±5.6、HI群 81.8±9.4、HI-H2群 67.6±6.3、p<0.05)
    • ボウマン腔消失を伴う糸球体肥大の割合はHI群で他の2群より有意に高く、HI-H2群と対照群では差がなかった(対照群 6.1±4.4%、HI群 65.0±25.9%、HI-H2群 18.4±16.3%、p<0.01)
    • 糸球体長軸はHI群で他の2群より有意に長く、HI-H2群と対照群では差がなかった(対照群 76.7±2.5μm、HI群 85.8±5.1μm、HI-H2群 76.0±4.1μm、p<0.05)
    • 近位尿細管の内径/外径比(Di/Do)はHI群で対照群より有意に低かった(対照群 40.1±7.6%、HI群 23.9±15.8%、HI-H2群 29.2±4.4%、p<0.05)
    • αSMA陽性細胞数とCD31陽性細胞数は3群間で有意差がなかった
    • 糸球体肥大の割合と糸球体細胞数の間に有意な正の相関が認められた(r=0.70, p<0.01)
    • 近位尿細管のDi/Doと糸球体肥大の割合の間に有意な負の相関が認められた(r=-0.87, p<0.01)
  • 考察・限界
    • 低酸素虚血による近位尿細管上皮細胞の腫脹が尿細管腔の狭小化を引き起こし、それが上流の糸球体に負荷をかけて糸球体肥大を引き起こした可能性が示唆された。
    • 水素ガス吸入療法は、そのような尿細管上皮細胞の腫脹と糸球体肥大を抑制することが示された。
      • 研究の限界として、ブタの免疫染色用試薬が十分に準備されておらず、糸球体内の炎症細胞を染色できなかったこと、また5日以上の長期的な経過を評価できなかったことが挙げられている。

Appendix(用語解説)

  • 新生児仮死:出生時に呼吸が確立されず、低酸素状態となる状態。世界的に新生児死亡の主要原因の一つ。
  • 急性腎障害(AKI): 急激に腎臓の機能が低下する状態。老廃物の排泄や体液バランスの維持が困難になる。
  • 低酸素性虚血(HI)傷害: 体の組織への酸素供給が不足(低酸素)し、かつ血流も不十分(虚血)になることによって引き起こされる組織の損傷。特に脳や腎臓など血流を多く必要とする臓器で問題となる。
  • 糸球体:腎臓の濾過装置として機能する毛細血管の塊。血液を濾過して原尿を生成する。
  • ボウマン腔:糸球体を包む空間で、糸球体からの濾液(原尿)を受け取る場所。
  • 近位尿細管:ボウマン嚢に続く尿細管の最初の部分。多くの物質の再吸収が行われる。
  • 低酸素虚血:組織への酸素供給が減少(低酸素)し、血流も減少(虚血)した状態。細胞障害を引き起こす。
  • αSMA(α平滑筋アクチン):メサンギウム細胞(糸球体内の支持細胞)のマーカー。
  • CD31:内皮細胞(血管の内側を覆う細胞)のマーカー。
  • Di/Do:近位尿細管の内径/外径比。値が低いほど尿細管上皮細胞の腫脹が強いことを示す。

論文情報

タイトル

Hydrogen gas inhalation ameliorates glomerular enlargement after hypoxic-ischemic insult in asphyxiated piglet model(水素吸入は、新生児仮死モデルブタにおける低酸素性虚血性傷害後の糸球体肥大を軽減する)

引用元

Iwaki, T., Nakamura, S., Wakabayashi, T., Nakao, Y., Htun, Y., Tsuchiya, T., Mitsuie, T., Koyano, K., Morimoto, A., Fuke, N., Yokota, T., Kondo, S., Konishi, Y., Miki, T., Ueno, M., Iwase, T., & Kusaka, T. (2025). Hydrogen gas inhalation ameliorates glomerular enlargement after hypoxic-ischemic insult in asphyxiated piglet model. Scientific reports15(1), 1677. https://doi.org/10.1038/s41598-025-85231-8

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