一言まとめ
マウスの敗血症モデル(中等度・重度CLP)において、水素吸入が酸化ストレスとHMGB1の上昇を抑え、腎臓・肝臓・肺などの臓器障害を軽減し、生存率を向上した。水素濃度と吸入時間に応じて効果は増強した。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は酸化ストレスとHMGB1放出を抑え、敗血症による臓器障害を軽減する可能性がある。
研究の背景と目的
敗血症は、集中治療室での死亡の主な原因であり、過剰な活性酸素種(ROS)の産生がその病態形成に重要な役割を果たしている。水素分子(H2)は、最も細胞毒性の強いROSであるヒドロキシルラジカル(・OH)を選択的に還元することで治療的な抗酸化作用を発揮し、虚血/再灌流によって誘発される臓器障害を効果的に防御することが示唆されている。そこで本研究では、敗血症モデルマウスを用いて、水素吸入療法の効果を検討した。
研究方法
研究結果
Appendix(用語解説)
- CLP(cecal ligation and puncture):盲腸を糸で結紮し、針で穿刺することで腹腔内に複数の菌を漏出させる敗血症モデル。臨床の多菌種感染を反映する代表的モデル。
- MPO(ミエロペルオキシダーゼ):好中球に含まれる酵素。組織中のMPO活性が高いほど炎症や細胞浸潤が強いことを示す。
- SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、CAT(カタラーゼ):活性酸素種を分解し毒性を低減する酵素。敗血症では活性低下が報告されている。
- 8-iso-PGF2α:酸化ストレス状態で産生される脂質過酸化物の一種。体内の酸化レベルの指標として用いられる。
- HMGB1(High-Mobility Group Box 1):細胞核内タンパクだが、炎症時に細胞外へ放出される。敗血症の後期炎症を引き起こす重要因子と考えられている。
論文情報
タイトル
Protective effects of hydrogen gas on murine polymicrobial sepsis via reducing oxidative stress and HMGB1 release(水素吸入によるマウス多菌種敗血症の防御効果:酸化ストレスとHMGB1放出低減を介した作用)
引用元
Xie, K., Yu, Y., Pei, Y., Hou, L., Chen, S., Xiong, L., & Wang, G. (2010). Protective effects of hydrogen gas on murine polymicrobial sepsis via reducing oxidative stress and HMGB1 release. Shock (Augusta, Ga.), 34(1), 90–97. https://doi.org/10.1097/SHK.0b013e3181cdc4ae
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