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研究報告

水素吸入は腸管機能障害を改善する

更新日:2026/02/11
Inhaled hydrogen ameliorates endotoxin-induced bowel dysfunction(水素吸入はエンドトキシン誘発性腸管機能障害を改善する)
敗血症モデルマウスおよびラットに1.3%の水素を含む空気を吸入させたところ、リポ多糖(LPS)投与による腸の蠕動運動の遅延が有意に改善し、腸管筋層における炎症反応も抑制された。
  1. 13分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 2専門家のコメント

3分で読める詳細解説

結論

水素吸入は、LPS誘発性の敗血症性イレウスに対し、腸管筋層における炎症抑制を介して保護効果を発揮する。

研究の背景と目的

集中治療室(ICU)における患者の主要な死亡原因の一つである敗血症は、全身性炎症反応症候群を伴い、腸の蠕動運動障害を引き起こす。近年、水素分子が様々な疾患に対して治療効果を示すことが報告されており、水素吸入は安全に使用できるため、新しい治療戦略として注目されている。本研究では、LPS誘発性イレウスに対する水素吸入の保護効果を検証した。

研究方法

  • 対象動物
    • C57BL/6Jマウス(8週齢、雄)およびSprague–Dawleyラット(雄)を使用。特定の基準や除外基準についての記載はあるが、詳細な基準は論文中で明確には示されていない。
  • 介入方法
    • LPS(エンドトキシン)をマウスには15 mg/kg、ラットには5 mg/kgを腹腔内投与して敗血症モデルを作製
    • 水素吸入濃度:1.3%
    • 水素吸入の実施時間:LPS投与の1時間前から開始し、合計25時間連続で吸入
    • 投与頻度・期間:上記のとおり、1回の実験で25時間続けて吸入(流量や1日あたりの回数に関する記載は論文内に明確な記述なし)
  • 対照群の設定
    • Sham/air群(LPSの代わりに生理食塩水を投与+空気吸入)
    • Sham/hydrogen群(LPSの代わりに生理食塩水を投与+1.3%水素吸入)
    • LPS/air群(LPS投与+空気吸入)
    • LPS/hydrogen群(LPS投与+1.3%水素吸入)
  • 評価方法
    • 腸管運動機能評価: FITC標識デキストランを胃内投与し、90分後に消化管を14区画に分割して蛍光の分布を測定(Geometric Center値の算出)
    • 腸管組織の炎症評価: 筋層への好中球浸潤をミエロペルオキシダーゼ染色(MPO染色)で定量
    • 遺伝子発現解析: 腸管筋層から抽出したmRNAをリアルタイムRT-PCRで定量(IL-6やTNF-α、iNOS、TLR4、IL-10など)
    • 培養マクロファージ実験: RAW264.7細胞にLPS刺激を与え、水素ガス存在下または非存在下での炎症性サイトカイン(TNF-α)および抗炎症性サイトカイン(IL-10)の産生をELISAで測定

研究結果

  • 主要な結果(数値・p値を含む)
    • LPS投与のみの群(LPS/air群)では、FITC標識デキストランの腸管通過が有意に遅延(図示されたGeometric Center値が有意に低下、n=6, p<0.05)
    • 水素吸入群(LPS/hydrogen群)では、この遅延が有意に改善(p<0.05)
    • LPS/air群では、腸管筋層への好中球の著しい浸潤を認めたが、水素吸入によって好中球数は有意に減少(n=4, p<0.05)
    • LPS投与後6時間で測定したIL-6、TNF-α、iNOS、TLR4などのmRNA発現量はLPS/air群で大きく上昇したが、水素吸入により有意に抑制(p<0.05)
    • IL-10(抗炎症性サイトカイン)mRNA発現量はLPS投与により上昇したが、水素吸入群でさらに上乗せ的に増加(p<0.05)
    • In vitro実験においても、水素ガス存在下でLPS刺激を受けたRAW264.7細胞はTNF-αの産生が抑制され、IL-10の産生が増加(p<0.05)
    • NO合成酵素阻害剤(L-NAME)を用いても、水素によるTNF-α抑制とIL-10上昇は変化せず、NO経路以外の機序が示唆された
  • 主要な結果に関連する考察
    • 水素吸入は、LPSによって活性化される炎症反応を軽減し、結果として腸管運動機能障害を抑制する効果を示す。特にIL-10のような抗炎症性サイトカインの上昇が、炎症性サイトカインの過剰な産生を抑える一因となっている可能性がある。NO経路とは無関係に、炎症抑制作用が発揮される点も興味深い。
  • 研究の限界
    • 研究対象が動物モデル(マウスおよびラット)に限定されているため、ヒト敗血症患者への直接的な応用可能性は今後の検証が必要と考えられる。他の細胞種やヒト臨床で同様の結果が得られるかは不明。

Appendix(用語解説)

  • 敗血症(Sepsis): 重症の感染症に伴い、全身性の炎症反応や多臓器不全が起こる病態
  • 腸管運動機能障害(Ileus): 腸管の蠕動運動が低下または停止し、消化管内容物の通過が妨げられる状態
  • 炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6 など): LPSなどの刺激により免疫細胞や組織細胞から分泌され、炎症反応を促進するシグナル伝達物質
  • 抗炎症性サイトカイン(IL-10): 炎症を抑制する働きを持つサイトカインで、過剰な炎症反応の制御に重要
  • iNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素): 炎症やストレス刺激に応答して誘導され、大量の一酸化窒素(NO)を産生する酵素。NOは血管拡張や平滑筋弛緩に関わる
  • TLR4(Toll様受容体4): 細胞表面に存在する受容体の一種で、LPSを認識して炎症性シグナルを起動する

論文情報

タイトル

Inhaled hydrogen ameliorates endotoxin-induced bowel dysfunction(水素吸入はエンドトキシン誘発性腸管機能障害を改善する)

引用元

Sakata, H., Okamoto, A., Aoyama-Ishikawa, M., Yamashita, H., Kohama, K., Fujisaki, N., Yamada, T., Kotani, J., Tsukahara, K., Iida, A., & Nakao, A. (2016). Inhaled hydrogen ameliorates endotoxin-induced bowel dysfunction. Acute medicine & surgery, 4(1), 38–45. https://doi.org/10.1002/ams2.218

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公開日:2025/02/05
最終更新日:2026/02/11
目次
  1. 3分で読める詳細解説
    1. 結論
    2. 研究の背景と目的
    3. 研究方法
    4. 研究結果
    5. 論文情報
  2. 専門家のコメント

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公開日:2025/02/05
最終更新日:2026/02/11
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