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結論
水素吸入は、人工呼吸器関連肺損傷(VILI)の炎症、酸化ストレス、細胞死を軽減し、肺機能を改善する可能性を示した。
研究の背景と目的
人工呼吸器(MV)は、重症患者の治療に不可欠だが、高い肺損傷リスク(VILI)を伴う。VILIは酸化ストレスや炎症を引き起こし、生命を脅かす状態となることがある。本研究では、水素分子の抗酸化・抗炎症作用に着目し、マウスモデルを用いて水素吸入がVILIを軽減できるかを検証することを目的とした。
研究方法
- 動物モデル: C57BL6雄マウス(1012週齢、2530g)を使用。
- グループ分け: 以下の4グループにランダムに割り振り。
- 2%水素ガス吸入(高い吸気量、低い吸気量)
- 2%窒素ガス吸入(高い吸気量、低い吸気量)
- 対照群(シャム群)には、各ガスを2時間曝露
- 実験条件:
- 高い吸気量: 潮汐量30mL/kg、2時間、呼吸数120回/分。
- 低い吸気量: 潮汐量10mL/kg、5時間。
- 酸素濃度(FiO2)0.21、ガス混合比2%。
- 評価項目: 肺損傷スコア、湿/乾重量比(W/D比)、動脈血ガス分析、炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β)および酸化ストレスマーカー(MDA)の測定。
研究結果
- 肺損傷の軽減: 水素吸入により、以下が確認された。
- 肺損傷スコアの低下(高い吸気量: 2%窒素吸入群 5.0±1.63 vs. 2%水素吸入群 3.0±0.82; p<0.05, 低い吸気量: 2%窒素吸入群 4.2±1.20 vs. 2%水素吸入群 3.5±0.85; p<0.05)。
- 湿/乾重量比の低下(高い吸気量: 2%窒素吸入群 4.5 vs. 2%水素吸入群 3.8; p<0.05, 低い吸気量: 2%窒素吸入群 4.1 vs. 2%水素吸入群 3.7; p<0.05)。
- 炎症性マーカーの抑制:
- 高い吸気量: TNFα、IL-1βのmRNA発現が2%窒素吸入群と比較して顕著に低下(p<0.05)。
- 低い吸気量: TNFα、IL-1βの抑制率は2%窒素吸入群と比較して高い吸気量と同等。
- 酸化ストレスの軽減:
- 高い吸気量: 肺内MDA濃度が2%窒素吸入群と比較して低下(2.0 vs. 1.5μmol/mg, p<0.05)。
- 低い吸気量: MDA濃度が2%窒素吸入群と比較して同様に低下が確認された。
- 細胞死の抑制:
- 高い吸気量: TUNEL陽性細胞数が2%窒素吸入群と比較して減少(40 vs. 20細胞/HPF; p<0.05)。
- 低い吸気量: 細胞死の減少効果が2%窒素吸入群と比較して同様に確認された。
- 肺機能改善:
- 高い吸気量: 動脈酸素分圧(PaO2)が2%窒素吸入群と比較して上昇(60mmHg vs. 80mmHg; p<0.05)。
- 低い吸気量: 動脈酸素分圧が2%窒素吸入群と比較して改善(65mmHg vs. 78mmHg; p<0.05)。
Appendix(用語解説)
- VILI (Ventilator-Induced Lung Injury): 人工呼吸器使用中に生じる肺損傷。
- 潮汐量(Tidal Volume): 一呼吸あたりの吸気量。
- 湿/乾重量比(Wet-to-Dry Ratio): 肺組織の水分量を示す指標。
- MDA (Malondialdehyde): 酸化ストレスの指標。
- TUNEL (Terminal deoxynucleotidyl transferase dUTP nick end labeling): 細胞死(アポトーシス)を検出する方法。
論文情報
タイトル
Hydrogen inhalation ameliorates ventilator-induced lung injury(水素吸入は人工呼吸器関連肺損傷を改善する)
引用元
Huang, C. S., Kawamura, T., Lee, S., Tochigi, N., Shigemura, N., Buchholz, B. M., Kloke, J. D., Billiar, T. R., Toyoda, Y., & Nakao, A. (2010). Hydrogen inhalation ameliorates ventilator-induced lung injury. Critical care (London, England), 14(6), R234. https://doi.org/10.1186/cc9389
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