一言まとめ
新生児網膜症のモデルマウスに対し、水素ガス吸入は血管新生を促進し、異常血管の形成を抑制するとともに、神経グリア機能障害を軽減する効果が確認された。
3分で読める詳細解説
結論
水素吸入は、網膜の血管再生を促進し、異常血管の形成を抑制する治療法として有望である。
研究の背景と目的
新生児網膜症(ROP)は、早産児に見られる主要な網膜血管疾患であり、幼児の失明の主な原因の一つである。ROPの現在の治療法としては抗VEGF療法や網膜光凝固があるが、これらは合併症が多い。水素(H₂)は、神経保護作用や抗酸化作用を持ち、低酸素虚血性疾患に対して有益であり、副作用が少ない治療法として注目されている。しかし、水素がROPにおいて血管新生を促進し、異常な血管形成を抑制するかどうかは未だ不明である。本研究の目的は、酸素誘発網膜症(OIR)マウスモデルにおいて、水素吸入が網膜血管新生、異常血管形成、及び神経グリア機能に及ぼす影響を調査することである。
研究方法
- 対象: 生後7日目のWTマウス及びNrf2欠損マウス(Nrf2−/−)
- 酸素濃度: 75%酸素に5日間曝露し、その後常圧空気に戻した。
- 水素吸入: 水素ガス(3~4%)を1日6時間吸入。グループA(P7~P12)、グループB(P12~P17)、グループC(P7~P17)、および無介入グループ(グループD)で比較(表1参照)。
- 評価: 網膜の血管閉塞、異常血管形成、血管漏出を分析。血管新生内皮細胞の数はHE染色により計測。さらに、免疫染色やウエスタンブロットを用いて、Nrf2、VEGF、Notch1、Dll4、HIF-1αなどのタンパク質発現を測定(表1)。
研究結果
Appendix(用語解説)
- Nrf2: 細胞内の酸化ストレス応答を調節する主要な転写因子。
- VEGF: 血管内皮細胞増殖因子。血管新生を促進する。
- Dll4: Notchシグナル伝達経路に関与し、血管芽形成を抑制するリガンド。
論文情報
タイトル
Molecular hydrogen promotes retinal vascular regeneration and attenuates neovascularization and neuroglial dysfunction in oxygen-induced retinopathy mice(水素分子は酸素誘発網膜症マウスにおいて網膜血管再生を促進し、異常血管形成および神経グリア機能障害を軽減する)
引用元
Guo, Y., Qin, J., Sun, R., Hao, P., Jiang, Z., Wang, Y., Gao, Z., Zhang, H., Xie, K., & Zhang, W. (2024). Molecular hydrogen promotes retinal vascular regeneration and attenuates neovascularization and neuroglial dysfunction in oxygen-induced retinopathy mice. Biological research, 57(1), 43. https://doi.org/10.1186/s40659-024-00515-z
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