精神・神経系
【医師監修】水素吸入でてんかん克服?2024年の最新研究が語る真実

【医師監修】水素吸入でてんかん克服?2024年の最新研究が語る真実

《この記事の執筆者》

突然の意識障害やけいれんを引き起こす「てんかん」。

約100万人の日本人がこの疾患に悩んでいるとされ、最近では高齢者の発症も増えており、予防・治療法の研究が急務です。

そんな中で注目されるのが「水素吸入」です。抗炎症作用を持つ水素は、脳の炎症を抑える可能性があり、てんかん予防・治療に効果があると期待されています。

本記事では、最新研究のデータを交えて、水素吸入がてんかんにどのように作用するのかを詳しく解説します。

てんかんとは

てんかんとは
出典:https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/epilepsy/about/

てんかんは、脳神経の電気的興奮が過剰になり、意識障害やけいれんなどが突然起きる慢性的な脳の疾患です1,2,3)

患者数は約100人に1人、日本全国に約100万人いるといわれています。

てんかんは従来若い人が発症する疾患と考えられていました。しかし、高齢化社会にともなって脳細胞が傷つき、てんかんを発症する高齢の人が増えています。

てんかんの原因

てんかんの原因は大きく6つに区分されており、下記に示しました1,2,3)

①素因性

遺伝子異常が原因だが、原因遺伝子はほとんど明らかになっていない。

②構造的

先天的や後天的(頭部外傷や脳卒中など)に脳が傷害を受けて発症する。

③感染性

脳炎や髄膜炎など脳の感染がきっかけで発症する。

④免疫性

自己免疫性疾患に付随して脳に炎症が起きる。

⑤代謝性

先天的に酵素が不足して脳が傷害を受ける。

⑥病因不明

てんかん患者の6割を占めるといわれている。

てんかん発作の分類

てんかんの発作は大きく焦点発作と全般発作に分けられます1,2,3)

焦点発作

脳の一部から興奮が始まり、その部位の機能に由来した症状が起きます。

主な症状は以下の通りです。

焦点発作の主な症状
  • 運動発作:手や顔の一部がこわばったり、ピクピクと動いたりする。
  • 感覚発作:身体の一部にしびれを感じたり、においを感じたりする。
  • 自律神経発作:吐き気がしたり、汗をかいたりする。
  • 精神発作:不安を感じたり、既視感が生まれたりする。

全般発作

脳の大部分または全体がほぼ同時に興奮して症状が起きます。

主な症状は以下の通りです。

全般発作の主な症状
  • 欠神発作:突然ぼーっとぼんやりしたり、口がもぐもぐと動いたりする。
  • ミオクロ二ー発作:突然瞬間的に手に力が入り、物を落としたりする。
  • 強直間代発作:いわゆる全身けいれん発作。手足が硬くつっぱった後、ガクガクと筋肉が収縮と弛緩を繰り返す。

てんかん発作時の対応

発作が起きたらまずは焦らず、安全な場所で横に寝かせて落ち着くまで見守りましょう1,2,3)

けいれんが5分以上続いたり、意識が戻らなかったりした場合はてんかん重積の可能性があるので、救急車を呼んでください。

治療には、てんかん発作が起きないように興奮を抑える抗てんかん薬を使います。てんかん発作のタイプによって使う薬が違うので、主治医の指示に従いましょう。

また、睡眠不足やストレス、過労、飲酒、服薬忘れは発作のきっかけになります。生活の見直しも忘れないようにしましょう。

水素吸入はてんかんの予防・治療に効果はある?

これまで見てきたように、てんかんは脳に傷がつき症状が起きる疾患です。

傷という表現は抽象的ですが、主に炎症などが起きていると考えられています。

この炎症などをいかに抑えられるか。それがてんかんの予防・治療につながると考えて、水素吸入を含めたあらゆる研究が行われています。

水素吸入は抗炎症作用などあらゆる効果が報告されており、てんかんにも有効な可能性が示されてきています。

ここでは2つの研究報告を見ていきましょう。

水素吸入はてんかんの予防に効果はある?

一つ目の研究は豚を用いて、虚血にともなう脳の傷害を水素吸入が予防するかを調べています4)

豚16頭に心臓バイパス手術を行い、血液循環を75分間停止させて脳の傷害を誘発させました。

その術前から術後まで24時間人工呼吸を行っており、人工呼吸中に2.4%水素ガスを吸入する群としない群(対照群)に分け、神経学的検査を毎日行いました。

結果は次の通りです。

研究の主な結果
  • 対照群の2頭が難治性てんかん重積となった。
  • 水素吸入群では神経学的無傷生存率が約90%、対照群で約10%と有意に高かった
  • 水素吸入群では術後の神経学的欠損スコア(SNDS)が1、2、3日目いずれも対照群の約半分と有意に低かった。
  • MRI、病理学的検査でも水素吸入群では脳の傷害が有意に見られなかった。

水素吸入は虚血性のてんかんを予防できる可能性

これは直接てんかんを調べた研究ではありませんが、脳に傷害が発生した豚のモデルが用いられています。

そしてその脳の傷害は水素吸入によって、様々な神経学的レベルで有意に低下したと報告されました。

したがって、脳の傷害によって発症するてんかんは、水素吸入によって発症を予防できる可能性が示唆されたといえます。

水素はてんかんの治療に効果はある?

二つ目は、てんかんの治療についての研究報告です。

残念ながら水素吸入についての報告はまだなく、ここでは水素水を用いた研究を紹介します。

この研究はピロカルピンにより難治性てんかん重積を誘発したモデルラットを使用しています5)。誘発したてんかんに対して抗てんかん薬のジアゼパムを投与後に水素水もしくは生理食塩水を投与し、その効果を調べました。

すると、脳波振幅が水素水投与群で有意に低くなり、てんかんで増加する海馬細胞膜受容体のリン酸化も水素水投与群で有意に低くなりました。

水素はてんかんの治療に役立つ可能性

てんかんでは脳波振幅が大きくなりますが、水素水投与群では有意に低下していました。

また、てんかんで増加する海馬細胞膜受容体は、リン酸化することがてんかんの病態につながるといわれています。

水素水投与群で受容体のリン酸化が有意に低下したのは、てんかんの病態を抑えていると考えられるでしょう。

したがって、水素はてんかんの治療に役立つ可能性が示唆されたといえます。

水素水よりも吸収効率の良い水素吸入で同様の研究を行うと、より水素の効果が期待できるかもしれません。

【私はこう考える】水素吸入とてんかん

てんかんに対する水素吸入の有効性を見てきました。

てんかんは神経学的な疾患であり、評価が難しいなかでこれだけの有効性が報告されたのは評価できます。

ただ、今回紹介した研究は2つとも動物実験であったように、ヒトでの研究は困難を極めている現状だと思います。

なぜならてんかんは突然発症する疾患であり、そのタイミングを逃すと評価が難しいからです。

また、2つ目は水素水の研究であったように、水素吸入の研究報告はまだ乏しく、水素吸入とてんかんの関係性を評価するにはまだ知見が少ないと考えます。

ヒトの臨床試験を進めつつ、まずは動物実験での知見を増やしていくことが、私からの現状の提案です。

しかしながら、まだ数少ない状況でこれだけ有効性が示されているのは驚くべきことでしょう。

今後、水素吸入がてんかんに有効であると示した報告がますます増えていくことを期待しています。

参考文献
  1. てんかん診療ガイドライン2018|一般社団法人日本神経学会
  2. てんかん|一般社団法人日本神経学会
  3. てんかんの定義(病気の定義)|神戸大学医学部附属病院てんかんセンター
  4. Cole, A. R., Perry, D. A., Raza, A., Nedder, A. P., Pollack, E., Regan, W. L., van den Bosch, S. J., Polizzotti, B. D., Yang, E., Davila, D., Afacan, O., Warfield, S. K., Ou, Y., Sefton, B., Everett, A. D., Neil, J. J., Lidov, H. G. W., Mayer, J. E., & Kheir, J. N. (2019). Perioperatively Inhaled Hydrogen Gas Diminishes Neurologic Injury Following Experimental Circulatory Arrest in Swine. JACC. Basic to translational science4(2), 176–187. https://doi.org/10.1016/j.jacbts.2018.11.006
  5. Jia, R., Zhu, G., Zhao, R., Li, T., Jiang, W., & Cui, X. (2024). Hydrogen treatment reduces electroencephalographic activity and neuronal death in rats with refractory status epilepticus by inhibiting membrane NR2B phosphorylation and oxidative stress. The Journal of international medical research52(3), 3000605241235589. https://doi.org/10.1177/03000605241235589

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