免疫系
【医師監修】水素吸入が全身性エリテマトーデス(SLE)の症状緩和に有効?最新エビデンスを解説

【医師監修】水素吸入が全身性エリテマトーデス(SLE)の症状緩和に有効?最新エビデンスを解説

全身性エリテマトーデス(SLE)は難病に指定されており、自己免疫の異常によって全身に炎症を引き起こすため、症状のコントロールが難しいことも少なくありません。

そんな中、近年「水素吸入療法」に注目が集まっています。水素の持つ抗酸化・抗炎症作用が、SLEの炎症や酸化ストレスを和らげる可能性があるのです。

本記事では、全身性エリテマトーデスの基礎知識から請最新の研究や症例報告をもとに、水素吸入がSLE患者さんにどのようなメリットをもたらす可能性があるのかを詳しく解説します。「新たな可能性を知りたい」「今の治療にプラスできる方法を探している」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

本記事のポイント
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫疾患の一種で女性に多い
  • 水素吸入は有害な活性酸素のみを選択的に除去し、SLEの炎症抑制に期待
  • 症例報告では腎機能の改善や疲労感の軽減効果が確認されている
  • 従来治療と併用する補助療法として、安全性の高さが大きな利点

《この記事の監修ドクター》

全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデス(SLE)とは?|「すいかつねっと」の疾患解説

全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫系が自分自身の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種です。

本来、私たちの免疫系は細菌やウイルスなどの外敵から体を守る役割がありますが、SLEでは誤って自分の細胞や組織を「敵」と認識して攻撃してしまいます。その結果、全身のさまざまな臓器や組織に炎症が起こります。

日本では約6〜10万人のSLE患者がいると推定され、指定難病となっています。女性が圧倒的に多く、女性:男性の比率は約9:1で、特に20〜40代での発症が多いのが特徴です1)。

SLEの主な原因

SLEの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な素因に環境因子が加わり、免疫異常を誘発すると考えられています。環境因子としては、感染症、紫外線、ホルモンバランスの変化などが挙げられます。

この病気の根本的なメカニズムは、免疫系が自分自身の細胞や組織を「異物」と誤認識して攻撃することです。正常であれば、免疫系は体内の細胞と外部からの侵入者を区別できますが、SLEでは自己と非自己の区別がつかなくなり、自己抗体(自分自身の細胞や組織に対する抗体)が産生されます。

これによって全身に炎症反応が起こり、様々な症状が現れるのです。

SLEの主な症状

SLEの症状は患者さんによって大きく異なり、以下のような多様な症状が現れます。

SLEの主な症状
  • 発熱や全身の倦怠感
  • 顔の蝶型の発疹(蝶形紅斑)
  • 関節の痛みや腫れ
  • 日光に当たると症状が悪化する(光線過敏)
  • 腎臓の炎症(ループス腎炎)
  • 貧血などの血液の異常
  • 口内炎や脱毛
    など

特徴的なのは、症状が良くなったり(寛解)、悪化したり(再燃)を繰り返すことです。

また、血液検査では「抗核抗体」という特殊な抗体がほとんどの患者さんで見つかり、診断の際に重要な手がかりとなります。

SLEの治療法

SLEの治療は患者さんの症状や重症度に合わせて、以下のような治療が行われます。

SLEの治療方法
  1. ステロイド薬:基本となる治療薬で、炎症を抑え、免疫反応を弱めます。
  2. 免疫抑制剤:必要に応じてステロイド薬と併用し過剰な免疫の働きを抑えます。
  3. 抗マラリア薬:病気の活動性を抑える効果があります。
  4. 生物学的製剤:最新の治療薬で、免疫系の特定の部分だけを標的にします。
  5. 生活管理:日光(紫外線)を避ける、感染症予防などの日常生活での対策。

これらの治療法は、患者さんの症状や重症度に合わせて組み合わせて使われます。

全身性エリテマトーデスに対する水素吸入の有効性

水素吸入療法は、水素ガス(H₂)を吸い込む治療法です。水素分子は非常に小さいため、体のあらゆる細胞に素早く行き渡る特性があります。

SLEに対する水素吸入療法の有効性を直接調べた大規模研究はまだ報告されていませんが、症例報告や関連する自己免疫疾患での研究から、いくつかの有望な効果が示唆されています。

酸化ストレスの軽減による症状の改善

SLE患者の体内では、「活性酸素」と呼ばれる体を錆びつかせる物質が過剰に作られています。2)これが免疫系の混乱や自己抗体の産生につながると考えられています。

水素の特徴は、特に有害な活性酸素だけを選んで無害化できることです。3,4)

SLEと同様の自己免疫疾患である「関節リウマチ」の患者を対象とした日本の研究では、水素水を4週間飲用させた結果、体内の酸化ストレスが有意に低下し、症状の改善が認められました。5)

免疫バランスの調整と炎症の抑制

水素には炎症反応を抑える作用もあります。4)炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の産生を減らすことで、病気の症状を和らげる可能性があります。

SLEの患者さんの症例では、水素療法後に免疫系のバランスが改善し症状の改善が見られたと報告されています6,7)。

これらの結果は、水素が自己免疫の過剰反応を抑え、免疫バランスを正常化する方向への促す可能性を示唆していると考えられます。

腎機能の改善効果で合併症を抑制

SLEの重要な合併症の一つにループス腎炎があります。腎臓は酸化ストレスに弱い臓器であり、SLE患者の約半数に発症するループス腎炎は、重症例では急速に腎不全に進行する恐れがあります。1)

症例報告では、慢性腎臓病を伴う高齢SLE患者に水素カプセル療法を行ったところ、腎機能の改善が認められました。7)また、動物実験ではありますが、水素吸入によって酸化ストレスの軽減および腎機能指標の改善も報告されており8)、ループス腎炎の進行抑制につながる可能性があります。

疲労感を改善し患者の生活の質を向上

SLEの典型的な症状である全身倦怠感や疲労感は、患者さんのQOL(生活の質)を大きく損なう要因ですが、従来の治療では十分に改善しないことが少なくありません。

先述の症例報告では、水素療法後での疲労感の有意な軽減が確認されています。7)

水素療法による疲労感の改善は、全身の酸化ストレス軽減と炎症抑制、さらにはエネルギー代謝の改善によるものと考えられます。特に標準治療では改善しにくい全身倦怠感などの緩和に、水素療法が補助的な役割を果たす可能性があります。

白石暁 先生のアバター

医師

白石暁 先生

水素療法は、さまざま作用機序によってSLEの複数の症状を改善する可能性が示唆されています。まだ大規模な研究結果はありませんが、水素吸入は副作用が少なく安全性が高いと報告されています。通常の治療と併せて実施することで、患者さんの日常生活の質を高める新たな選択肢となると期待が寄せられています。

まとめ:水素吸入は全身性エリテマトーデスへの応用が期待される

全身性エリテマトーデス(SLE)に対する水素吸入療法は、症例報告や小規模研究から一定の効果が示唆され、期待が寄せられています。

水素療法の魅力の1つは、極めて高い安全性と副作用の少なさにあります。特に、ステロイドや免疫抑制剤などの従来治療では改善しにくい疲労感や生活の質(QOL)に関わる症状の緩和に役立つ可能性が期待されています。

しかし、現時点では大規模な無作為化比較試験(RCT)による確実な有効性の証明はまだなされておらず、研究段階の補助療法といえます。

有効性が確立されるためには、SLE患者を対象とした大規模な臨床試験が実施され、長期的な効果や安全性、最適な治療プロトコル(頻度・濃度・期間など)を明らかにする必要があります。

今後のさらなる研究によって、水素吸入療法がエビデンスに基づく新たな補助療法として確立されることを期待しましょう。

すいかつねっとのエビデンス評価
3.0

水素吸入がSLEの炎症制御や酸化ストレス軽減に寄与する可能性が、動物実験や少数の症例報告で示唆されている。腎機能改善や疲労感軽減の報告もあるが、大規模な臨床試験は不足しており、今後の研究が求められる段階。

すいかつねっとのエビデンス評価基準はこちら)

参考文献
  1. 全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49) – 難病情報センター
  2. Perl A. (2013). Oxidative stress in the pathology and treatment of systemic lupus erythematosus. Nature reviews. Rheumatology, 9(11), 674–686. https://doi.org/10.1038/nrrheum.2013.147
  3. Barancik, M., Kura, B., LeBaron, T. W., Bolli, R., Buday, J., & Slezak, J. (2020). Molecular and Cellular Mechanisms Associated with Effects of Molecular Hydrogen in Cardiovascular and Central Nervous Systems. Antioxidants, 9(12), 1281. https://doi.org/10.3390/antiox9121281
  4. Tian, Y., Zhang, Y., Li, X., Wei, Y., Wei, J., & Wei, Y. (2021). Hydrogen, a novel therapeutic molecule, regulates oxidative stress, inflammation, and apoptosis. Frontiers in Physiology, 12, Article 789507. https://doi.org/10.3389/fphys.2021.789507
  5. Ishibashi, T., Sato, B., Rikitake, M., Seo, T., Kurokawa, R., Hara, Y., Naritomi, Y., Hara, H., & Nagao, T. (2012). Consumption of water containing a high concentration of molecular hydrogen reduces oxidative stress and disease activity in patients with rheumatoid arthritis: an open-label pilot study. Medical gas research, 2(1), 27. https://doi.org/10.1186/2045-9912-2-27
  6. Tu, T. H., Lu, J. W., Wu, C. H., Ho, Y. J., Lui, S. W., Hsieh, T. Y., Wang, K. Y., & Liu, F. C. (2025). Molecular Hydrogen Therapy for SLE-PAH: Case Report on Immune Marker Modulation. In vivo (Athens, Greece), 39(2), 1211–1219. https://doi.org/10.21873/invivo.13926
  7. Lin, Y. T., Lu, J. W., Ho, Y. J., Lui, S. W., Hsieh, T. Y., Wang, K. Y., & Liu, F. C. (2025). Molecular Hydrogen as a Potential Adjunctive Therapy to Improve Renal Function and Reduce Fatigue in an Elderly Patient With Chronic Comorbidities: A Case Report. In vivo (Athens, Greece), 39(1), 572–576. https://doi.org/10.21873/invivo.13862
  8. Xue, J. L., Liu, B. Y., Zhao, M., Zhang, M. Y., Wang, M. Y., Gu, Q. Q., Zhang, X. Y., & Qin, S. C. (2023). Inhalation of 4% and 67% hydrogen ameliorates oxidative stress, inflammation, apoptosis, and necroptosis in a rat model of glycerol-induced acute kidney injury. Medical gas research, 13(2), 78–88. https://doi.org/10.4103/2045-9912.345169

このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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