消化器系
【医師監修】クローン病に水素吸入は有効?最新治療法とエビデンスを解説

【医師監修】クローン病に水素吸入は有効?最新治療法とエビデンスを解説

《この記事の監修者》

クローン病と聞くと、「自分には関係ないかも」と思うかもしれません。

しかし、近年、この慢性炎症性腸疾患が身近な健康問題として注目されています。

なぜなら、腸内環境や酸化ストレスのバランスが崩れることで誰でも発症する可能性があるからです。

本記事では、クローン病の基本的な特徴から、水素吸入が症状緩和にどのように役立つかを最新の研究データをもとにわかりやすく解説します。

すいかつねっとのエビデンス評価
2.5

動物実験や水素水研究を基に、水素吸入が炎症抑制や腸粘膜保護に寄与する可能性が示唆される段階。ただし、ヒトを対象とした直接的な研究は極めて限られる。

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クローン病ってどんな病気?

クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる部位に炎症が起こり得る原因不明の慢性炎症性腸疾患です。

この炎症は消化管の壁全体に及ぶため、ただの「お腹の不調」とは異なり、腹痛、下痢、血便、体重減少などの重い症状が現れます。

さらに、クローン病の病態は炎症性、線維性、または穿孔性と多様であり、症状の程度は様々で、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化する状態)を繰り返すことが特徴です。1)

クローン病の原因は?

クローン病の原因ははっきりとはわかっていませんが、以下のような複数の要因が重なって発症すると考えられています。

クローン病を発症する要因
  • 免疫システムの異常
    本来、身体を守る免疫システムが過剰に反応し、腸内に常在する細菌まで攻撃対象になり、慢性的な炎症を引き起こすとされています。2)
  • 遺伝的要因
    家族内発症がみられることなどから、遺伝的素因の関与が疑われています。3)
  • 環境要因(喫煙・食事など)
    喫煙歴があるとクローン病のリスクが高まるとされ、さらに食生活なども発症に関わると考えられています。4)
  • 腸内細菌叢の異常
    腸内環境が乱れることで炎症が持続しやすくなる可能性が指摘されています。3)

また、クローン病の患者さんの腸内では、酸化ストレスの増加やビタミンA、C、E、β-カロテンなどの抗酸化物質のレベルが低下していることが報告されています 5)。

クローン病の主な症状は?

クローン病の主な症状は、腹痛、下痢、血便、体重減少などです。1)

これらの症状は、炎症が起こっている場所や程度によって異なります。また、発熱や倦怠感、貧血などの全身症状が現れることもあります。

さらに、関節炎や皮膚の発疹、眼の炎症などの腸管外合併症を伴うこともあり、症状が強くなる時期と落ち着く時期を繰り返すのが特徴です。

クローン病の一般的な治療法は?

クローン病の治療は、症状のコントロール(寛解導入)と寛解状態の維持を目的に行われます。

主な治療方法は下記のとおりです。

クローン病の一般的な治療法
  • 薬物療法
    5-アミノサリチル酸やステロイド、免疫調整剤や生物学的製剤などが用いられます。炎症を抑え、症状を緩和することを目的としています。
  • 栄養療法(食事管理)
    消化管にかかる負担を軽減するために、成分栄養剤などを活用する場合があります。
  • 外科的治療(手術)
    重度の狭窄や瘻孔ができた場合などには、外科的な処置が検討されることがあります。1)
  • 生活習慣の改善
    禁煙やストレス管理など、再燃を抑える取り組みも重要です。4)

水素吸入のクローン病への有効性について考察

水素吸入療法とは、水素ガスを吸い込んで酸化ストレスを抑え、炎症を軽減する治療法です。水素は細胞を傷つける「悪玉活性酸素」を選択的に除去する抗酸化作用があるとされています。6)

クローン病の患者さんは酸化ストレスが高まりやすく、体内の抗酸化物質が減少しやすいと指摘されているため、水素吸入療法が症状を和らげる可能性が期待されています。5)

しかし、クローン病への効果を十分に示す研究はまだ少ないのが現状です。

ここでは関連する研究報告から、水素吸入がクローン病の症状を改善する可能性について考察していきます。

炎症を抑えて腸のダメージを軽減

マウスを使った実験では、水素水(HRW=Hydrogen-Rich Water)を投与すると、腸炎モデルにおいて炎症や結腸の損傷が軽減されることが示されています。8)

また、電解水素水(EHW=Electrolyzed Hydrogen Water)の摂取によっても、炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)の産生が抑えられ、腹痛などの症状が緩和されたとの報告があります。9)

これらの実験結果から、水素が炎症性物質の生成を抑え、腸のダメージを低減する働きが推察されています。

酸化ストレスを軽減し腸粘膜を保護

クローン病では、体内の酸化ストレスが高まりやすいとされています。

水素は活性酸素を選択的に除去する性質を持っており、結果として細胞の酸化的ダメージを抑制すると考えられます。6)

酸化ストレスの軽減は、腸粘膜を保護し、炎症の悪化を防ぐうえで大きな役割を果たす可能性があります。

腸内細菌叢の調節による再燃防止

水素が腸内細菌叢のバランスを整える可能性も示唆されています。

ある研究では、水素が腸内細菌叢の代謝に影響を及ぼし、腸内環境の改善を通じて炎症の抑制に寄与する可能性が示されています。10)

腸内細菌叢はクローン病の病態とも深くかかわっており、これを整えることは再燃予防にもつながると考えられています。

まとめ:水素吸入でクローン病を改善できるのか

クローン病は、慢性炎症と酸化ストレスが複雑に絡み合った病気です。

現時点では、薬物療法や栄養療法が中心となり、症状をコントロールしながら寛解を目指すことが一般的ですが、水素吸入療法は補助的な選択肢として注目されはじめています。

水素が持つ「抗酸化作用」と「抗炎症作用」は、クローン病の病態に深く関わる酸化ストレスや炎症を抑える上で、有効に働く可能性が考えられます。

しかし、ヒトを対象とした大規模な臨床試験にろゆエビデンスはまだ十分に蓄積されていません。

現時点では、水素吸入療法がクローン病のサポート治療となりうる可能性は理論的にゼロではないという温度感でしょう。

今後の研究の進展に期待しながら、過度な期待せずに、興味のある方は、必ず主治医とよく相談しながら検討することをおすすめします。

参考文献
  1. The American Society of Colon and Rectal Surgeons Clinical Practice Guidelines for the Surgical Management of Crohn’s Disease, accessed on January 10, 2025, https://fascrs.org/ascrs/media/files/downloads/crohns-CPG-2020.pdf
  2. Crohn’s Disease: What It Is, Symptoms, Causes & Treatment – Cleveland Clinic, accessed on January 10, 2025, https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/9357-crohns-disease
  3. Pathogenesis of Crohn’s disease – PMC, accessed on January 10, 2025, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4447044/
  4. Crohn Disease Pathology: Overview, Epidemiology, Etiology – Medscape Reference, accessed on January 10, 2025, https://emedicine.medscape.com/article/1986158-overview
  5. Concepts of oxidative stress and antioxidant defense in Crohn’s disease – PubMed Central, accessed on January 10, 2025, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3801366/
  6. Hydrogen regulates ulcerative colitis | JIR – Dove Medical Press, accessed on January 10, 2025, https://www.dovepress.com/hydrogen-regulates-ulcerative-colitis-by-affecting-the-intestinal-redo-peer-reviewed-fulltext-article-JIR
  7. Tian, Y., Zhang, Y., Wang, Y., Chen, Y., Fan, W., Zhou, J., Qiao, J., & Wei, Y. (2021). Hydrogen, a Novel Therapeutic Molecule, Regulates Oxidative Stress, Inflammation, and Apoptosis. Frontiers in physiology, 12, 789507. https://doi.org/10.3389/fphys.2021.789507
  8. Hydrogen-rich water protects against inflammatory bowel disease in mice by inhibiting endoplasmic reticulum stress and promoting heme oxygenase-1 expression – PubMed Central, accessed on January 10, 2025, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5330822/
  9. Electrolyzed Hydrogen Water Alleviates Abdominal Pain through Suppression of Colonic Tissue Inflammation in a Rat Model of Inflammatory Bowel Disease – PMC – PubMed Central, accessed on January 10, 2025, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9655279/
  10. Ge, L., Qi, J., Shao, B., Ruan, Z., Ren, Y., Sui, S., Wu, X., Sun, X., Liu, S., Li, S., Xu, C., & Song, W. (2022). Microbial hydrogen economy alleviates colitis by reprogramming colonocyte metabolism and reinforcing intestinal barrier. Gut microbes, 14(1), 2013764. https://doi.org/10.1080/19490976.2021.2013764

このコラム記事は、一般的な医学的情報および最新の研究動向をもとに作成しておりますが、読者の方の個別の症状や体質などを考慮したものではありません。また、医学的アドバイス、診断、治療に代わるものではなく、特定の製品や治療法の効果・効能を保証、証明するものでもありません。健康上の問題がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師などの専門家に必ずご相談ください。本コラム記事の情報をもとに被ったいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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