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【医師監修】水素吸入が放射線性脳炎に効く?新たな治療の可能性を探る

【医師監修】水素吸入が放射線性脳炎に効く?新たな治療の可能性を探る

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放射線性脳炎は、がん治療の一環として行われる放射線療法の副作用として発症することがある深刻な脳の炎症です。

頭痛や認知機能の低下などの症状が現れ、場合によっては治療の中断を余儀なくされることもあります。

本記事では、放射線性脳炎の原因や症状、治療法を解説し、新たな治療法として注目されている水素吸入の可能性について考察していきます。放射線性脳炎に対する最新の知見を知り、効果的な予防や改善策を探っていきましょう。

放射線性脳炎について

放射線性脳炎について

放射線性脳炎は、主にがん治療において使用される放射線療法による脳へのダメージが原因で発症する脳の炎症のことです。1)

深刻な場合は、治療を中断せざるを得ない場合もあるため、軽視できない副作用です。

まずは、放射線脳炎を発症する原因や症状、治療法などについて詳しくみていきましょう。

放射線性脳炎の種類

放射線性脳炎には、放射線治療中に起こる急性のものと、放射線治療が終わってから数か月から数年経過してから起こる晩期のものがあります。

急性の脳炎は、放射線治療の1回目もしくは2回目が終わってから短期間で発生します。放射線治療を続けるにつれ、症状は改善します。しかし、吐き気や頭痛といった症状が強い場合には、治療を中断しなくてはならない場合もあります。

放射線性脳炎の主な原因

放射線性脳炎は、主に頭頸部への放射線治療の副作用として発生します。放射線ががん細胞だけではなく、正常な脳細胞に損傷を与えることで、免疫反応や炎症反応が引き起こされ、脳組織が損傷します。

この炎症が、時間の経過とともに慢性的な症状を引き起こす原因となります。また、放射線治療の際に、脳の周辺にある血管や神経も影響を受けることで、血流の悪化や神経細胞の機能低下が発生することもあります。

放射線性脳炎の主な症状

放射線性脳炎の症状は、発症する脳の部位や病変の程度に応じて多様です。

一般的には、以下のような症状が報告されています。1)

放射線性脳炎の主な症状
  • 頭痛
  • 記憶障害
  • 認知機能低下
  • 運動障害(歩行困難、麻痺など)
  • 言語障害
  • けいれん

これらの症状は、放射線照射後数か月から数年後に出現し、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

放射線性脳炎の標準的な治療

現在、放射線性脳炎に対する標準的な治療法としては、ステロイド薬が最も広く使用されています。ステロイドは炎症を抑制し、脳の腫れを軽減する効果が期待されます。

しかし、長期間にわたる使用には副作用のリスクが伴います。また、抗炎症薬や免疫抑制剤なども併用される場合がありますが、根本的な治療法は確立されていないため、症状の管理が主な目的となっています。

水素吸入は放射線性脳炎の予防・改善に効果はある?

水素吸入は放射線性脳炎の予防・改善に効果はある?

水素吸入は、活性酸素を抑制する効果が期待されており、放射線性脳炎のような炎症性疾患に対して有効である可能性が示唆されています。

研究によれば、放射線治療に伴う酸化ストレスが放射線性脳炎の発症に関与しているとされており、水素の抗酸化作用がこれを軽減する役割を果たす可能性があります。

水素吸入が放射線性脳炎に役立つのかについて、予防と症状改善の観点から見ていきましょう。

水素吸入は放射線性脳炎の予防に効果はあるのか?

水素吸入が放射線性脳炎の予防に効果的であるかどうかについては、現時点で十分なエビデンスが存在しません。

ただし、理論的には水素が酸化ストレスを抑制することで、放射線照射による脳細胞の損傷を軽減する可能性があると考えられます。

一部の動物実験や細胞実験では、水素分子が炎症や酸化ストレスを抑制する効果を示し、神経保護効果が期待される結果が報告されています。

例えば、水素ガスは、外傷性の脳損傷を含む脳損傷に対して神経保護効果がある可能性を示しています。

複数の研究で、水素は抗酸化作用、抗炎症作用、抗アポトーシス作用を持つため、外傷性脳損傷の治療に有望であるとされています。2、3、4)

そのため、水素吸入療法は放射線性脳炎の予防にも役立つ可能性があります。今後の研究によって、水素吸入が予防的な役割を果たすかどうかが明らかになることが期待されています。

水素吸入は放射線性脳炎の症状改善に効果はあるのか?

水素吸入による症状改善についても、現時点では決定的なエビデンスは不足していますが、動物実験では酸化ストレスを軽減し、神経保護効果を発揮する結果が得られています。

水素吸入が神経細胞の損傷を防ぎ、炎症を抑制することで、症状の進行を遅らせる可能性があると考えられます。

特に、炎症反応が強く関与する疾患において、水素療法が有望であることが示唆されています。

ただし、次のような研究が必要な事項がまだ多くあります。2、3、4)

さらに研究が必要な事項
  • 水素の神経保護メカニズムの関係
  • 投与する最適な水素濃度
  • 臨床応用における水素の安全性

現時点では水素吸入の効果に関する臨床試験のデータが限られているため、ヒトに対しての効果については慎重な評価が必要です。放射線性脳炎における水素吸入の効果を確証するためには、さらなる研究が必要とされています。

【私はこう考える】水素吸入と放射線性脳炎

水素吸入は、放射線性脳炎に対する新たな補助療法として期待が持てるものの、現時点では臨床的なデータが限られており、エビデンスに基づく確固たる結論を下すには至っていません。

動物実験や細胞実験の結果からは、水素の抗酸化作用や神経保護効果が示唆されていますが、人間に対してどの程度の効果があるのかは、今後の臨床試験によって明らかにされる必要があります。

水素吸入は、既存の治療法を補完するものとして試す価値があるかもしれませんが、現時点では標準的な治療法であるステロイドや抗炎症薬と併用しながら、その効果を慎重に観察する必要があります。引き続き、さらなる研究によって水素吸入の有効性が実証されることが期待されます。

参考文献
  1. 放射線療法による神経系の損傷 – MSDマニュアル家庭版
  2. Kumagai, K., Toyooka, T., Takeuchi, S. et al. Hydrogen gas inhalation improves delayed brain injury by alleviating early brain injury after experimental subarachnoid hemorrhage. Sci Rep 10, 12319 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-69028-5
  3. Qing-hui Zhao, Fei Xie, Da-zhi Guo, Fang-di Ju, Jin He, Ting-ting Yao, Peng-xiang Zhao, Shu-yi Pan, Xue-mei Ma.Hydrogen inhalation inhibits microglia activation and neuroinflammation in a rat model of traumatic brain injury. Brain Research.1748,147053 (2020). https://doi.org/10.1016/j.brainres.2020.147053
  4. Hu HW, Chen ZG, Liu JG, Chen G. Role of hydrogen in traumatic brain injury: a narrative review. Med Gas Res. 2021 Jul-Sep;11(3):114-120. doi: 10.4103/2045-9912.314331. PMID: 33942782; PMCID: PMC8174410.
  5. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8174410/

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