研究論文
Protective role of hydrogen-rich water on aspirin-induced gastric mucosal damage in rats(水素水がアスピリン誘発胃粘膜損傷に与える保護効果)

水素水が胃粘膜損傷に与える保護効果

一言まとめ

40匹の雄ラットを4群に分け、事前に水素水を投与してからアスピリンを与えたところ、胃粘膜の損傷スコアが有意に低下し、酸化ストレス指標や炎症性サイトカインも減少した。水素水の飲用はアスピリン誘発胃粘膜障害を軽減する可能性が示唆された。

3分で読める詳細解説

結論

水素水は酸化ストレスと炎症を抑制し、アスピリンによる胃粘膜損傷を軽減する可能性がある。

研究の背景と目的

アスピリンは抗炎症・鎮痛効果や心血管疾患予防効果など、多方面で広く使われるが、消化管障害(特に胃粘膜損傷)を引き起こす副作用が問題となっている。従来から低用量アスピリンやコーティング剤などでリスク低減を図ってきたが、十分な解決には至っていない。近年、抗酸化・抗炎症作用をもつ水素水の生体保護効果に注目が集まっており、本研究ではアスピリン誘発胃粘膜障害に対する水素水の予防的効果を検証することを目的とした。

研究方法

  • 対象者(動物実験の内容)
    • 雄のSprague Dawleyラット40匹(体重200–250g)を使用
    • 4群(各群10匹)にランダムに割り振り
      1. 正常対照群(経口生理食塩水)
      2. 水素水群(経口水素水80mL/日)
      3. アスピリン群(経口生理食塩水後にアスピリン400mg/kg)
      4. 水素水+アスピリン群(7日間の水素水投与後、アスピリン400mg/kg)
  • 介入方法(濃度・量・期間・頻度など)
    • 水素水の水素濃度:0.63~0.82 mmol/L
    • 1日あたり約80mL/匹の水素水を7日間継続して与える(3時間毎に新鮮な水素水と交換)
    • 8日目にアスピリン(400mg/kg)または生理食塩水を投与し、その8時間後に組織および血液を採取
  • 対照群の設定
    • 正常対照群および水素水のみ投与群を設置し、アスピリン投与群と比較
  • 評価方法
    • 肉眼的評価:胃を切開し、粘膜の損傷度を0~6点でスコア化
    • 病理学的評価:胃組織をHE染色し、損傷や炎症の程度を観察
    • 酸化ストレス指標:胃組織中のMDA(マロンジアルデヒド)、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)活性
    • 炎症性サイトカイン:胃組織中のIL-6、TNF-α、血清中のIL-1β、TNF-α
    • 免疫組織化学:胃組織中COX-2(シクロオキシゲナーゼ2)の発現レベル

研究結果

  • 主要な結果(具体的数値)
    • 肉眼的な損傷スコア
      • アスピリン群:4.04 ± 0.492
      • 水素水+アスピリン群:2.10 ± 0.437(p < 0.05 で有意に低減)
    • 胃組織中の酸化ストレスが低下し、抗酸化指標が改善
      • MDA:アスピリン群 2.43 ± 0.145 → 水素水併用群 1.79 ± 0.116
      • MPO:アスピリン群 2.53 ± 0.238 → 水素水併用群 1.40 ± 0.208
      • SOD:アスピリン群 37.94 ± 8.44 → 水素水併用群 59.55 ± 9.02
    • 胃組織中の炎症性サイトカインが抑制された
      • IL-6:アスピリン群 46.65 ± 5.50 pg/mg → 水素水併用群 32.15 ± 4.83 pg/mg
      • TNF-α:アスピリン群 1305.08 ± 101.23 pg/mg → 水素水併用群 855.96 ± 93.22 pg/mg
    • 血清中の炎症性サイトカインも抑制された
      • IL-1β:アスピリン群 505.38 ± 32.97 pg/mL → 水素水併用群 343.37 ± 25.09 pg/mL
      • TNF-α:アスピリン群 264.53 ± 28.63 pg/mL → 水素水併用群 114.96 ± 21.79 pg/mL
    • COX-2発現(免疫染色スコア)が低下した
      • アスピリン群:8.4 ± 2.1 → 水素水併用群:2.9 ± 1.5
        いずれも水素水前処置による有意な抑制・改善効果が確認された(p < 0.05)
  • 主要な結果に関連する考察
    • 水素水は胃粘膜組織の酸化ストレスおよび炎症性サイトカインを抑制し、さらにCOX-2の過剰発現を低減することでアスピリンによる胃障害を和らげる可能性がある
    • この機序として、「抗酸化作用 → 炎症性因子の抑制 → 胃粘膜保護」へと繋がる連鎖反応が考えられる
  • 研究の限界
    • 論文内で明確な限界点についての詳細な記述は見当たらない

Appendix(用語解説)

  • 酸化ストレス:活性酸素種(フリーラジカルなど)が過剰に産生され、細胞や組織を傷害する状態
  • MDA(マロンジアルデヒド):脂質過酸化の指標となる物質
  • MPO(ミエロペルオキシダーゼ):好中球などが持つ酵素で、炎症部位の好中球浸潤を反映する指標
  • SOD(スーパーオキシドジスムターゼ):活性酸素(スーパーオキシド)を除去する代表的な抗酸化酵素
  • サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1β など):免疫細胞などが産生する情報伝達物質で、炎症や免疫反応の調節に関わる
  • COX-2(シクロオキシゲナーゼ2):プロスタグランジン合成に関わる酵素の一種。炎症時などに誘導されやすい

論文情報

タイトル

Protective role of hydrogen-rich water on aspirin-induced gastric mucosal damage in rats(水素水がアスピリン誘発胃粘膜損傷に与える保護効果)

引用元

Zhang, J. Y., Wu, Q. F., Wan, Y., Song, S. D., Xu, J., Xu, X. S., Chang, H. L., Tai, M. H., Dong, Y. F., & Liu, C. (2014). Protective role of hydrogen-rich water on aspirin-induced gastric mucosal damage in rats. World journal of gastroenterology20(6), 1614–1622. https://doi.org/10.3748/wjg.v20.i6.1614

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